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ブログ・野口 誠一
第68回:危ない経営者第3条・時間や約束にルーズな経営者
2004年7月28日
「危ない経営者10か条」の第3条は、「時間や約束事にルーズな経営者」である。
経営者に限らず、時間や約束を守れない人は信用を失い、うとんじられる。それが経営者なら即座に倒産である。企業活動はすべて「信用」という基盤の上に成り立っているからである。納期を守れない、品質を守れない、そんな会社はたちまち淘汰されていく。と、ここまでは議論の余地がない。
この間なにげなく松下幸之助の本を読んでいたら面白い文章にぶつかった。「正しいことは通るか……男と男の約束を守ったら」という短い文章である。それによれば、幸之助がまだ若かりし頃、ある電気製品をめぐって熾烈な過当競争が展開され、各社とも原価割れに陥ったという。そこで業界の代表が集まり、正常化即日実行を取り決めた。幸之助はその約束を守った。ところがその1か月半後、販売代理店会議に出た幸之助は、「おまえのところだけ値上げするとはけしからん」とつるし上げを食ったという。正常化の約束を守ったのは松下だけだったのである。そこで幸之助は次のように言った。
「あれは、男と男が約束して、そして実行したのです。それを他のメーカーが約束通り実行していないということは、私は今日はじめて知りました。みなさんが、そういう約束を実行しないメーカーのほうを頼りにされるのであれば、仕方ありません。もうその品物はほかから買ってくださって結構です」
この幸之助の言葉に、一座かシーンと静まり返ったという。以後、「松下は約束を守る会社」という信用とイメージか定着し、以前にもまして売れ行きが伸びたという。
私はこの文章を読んで、松下幸之助の迫力というものを想った。おそらくその迫力は、「自分が約束を守った」という自負心がもたらしたものに違いない。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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物流メルマガ
「約束を守る」ことについて深い理があります。約束を結果として 「守り続けて」君は約束を守る男だと言う信頼を得るのは至難である、守れそうもない変化の兆しを察して早めに約束の変更を申し出る、守ろうとする努力の姿をお客様に見える形に表すことを「真に善いお客様」は評価されると言う真理があります。
また、商品にもよりますが安定原料確保の為に複数者購入が一般的ですが、ある良心的業者が 努力の成果として納入価格を僅か下げてきて、老舗であるお客様は有り難く受けた。それを知った他者は「あなたは水臭い、うちも同じ価格にさせてもらいます」と言ってきたのでこれも有り難く受けた。その間高い価格の業者とも 平常通り購入したと言う。またこう言う経営者の話もある。老舗の御曹司が社会勉強で「銀行」に修行に出たが 父親に向かって「ウチの借入金利は他社に比べて 高利である、他の銀行に交渉して変えよう」と言ったら、父親曰く「ウチは困っていないし それぞれ事情があるのだから 今のままで良い」と言ったと言う。そこに言うに言われぬウエットな善い味わいがあると思うのですが 永続に視点を置くか側根のベストな、ドライな道を行くか、トップの決断が支配的と言えましょうか。