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ブログ・高橋 聡
第212回:令和時代の運送業経営 労務トラブル実例編(8)
2021年12月25日
【労務トラブル実事例編】⑧
「コロナ禍で頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで新型コロナウイルス影響の下で「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。今回も前回に続き、運送会社で実際に発生した「労務トラブル実事例」とその対応策について説明してまいります。
1.労務トラブル実事例
⑴トラブル内容
埼玉県の運送会社A社に4年勤務している現場所長Bさん。長年、商社系荷主の業務に就いており、Bさん以外には現場は分からない、という状況になっていた。数か月前からBさんの勤務状況に関して遅刻や欠勤が多くなり、A社社長がBさんに聞いたところ「家庭内で問題が」との回答で、どうやら奥さんと上手くいっていないようであったが、それ以上は突っ込んで話をすることは遠慮していた。ある日、Bさんが出社しないので連絡してみると、「Bさんが自殺未遂をして病院に搬送」という状況であった。A社としては「商社の現場も対応しなくてはならない、Bさんの出社を待っているのも復帰が不明」であり、対応に苦慮していた。
仕方なくA社社長の息子C(専務)が商社の現場対応を行ったが、急場しのぎの状況で今後の体制整備が急務である。Bさんは「うつ病」状態であるものの、復職を希望しており「もう大丈夫」と言ってはいるが、A社社長としては、とても不安な状況である。
⑵事例のポイント
本事例では、社員数の限られた中小運送業の現場で発生した事案です。A社のように特定の人物に現場を任せている(任せざるを得ない)状況となっている現場は実際に多く、その方に何かあった場合には「現場が回らなくなる」ことが起こっています。A社の場合は専務Cがいらっしゃったため、何とか現場対応は出来ていますが、このような場合に混乱することが多くあります。
経営資源に限りがある中小運送業の現場では典型的な事例ですが、コロナ禍の状況でもあり、いざという時の代替プランは常に検討しておく必要があります。
特定の社員のみが現場を把握している状況は会社経営にとっても大きなリスクであり、本事例のような現場対応マターだけではなく、「不正」の温床になるリスクがあるため注意が必要です。
2.対応策
実際にA社ではBさんと6か月の有期契約を締結し、後任への業務引き継ぎに注力してもらっています。本来は「うつ病」を発生しているBさんを引き継ぎのためとはいえ、継続雇用することについてはリスクがあります。家庭問題が直接の原因であったとしても業務上のストレスなどが複合的に影響して「労災認定」となるケースもあります。「労災」となると解雇は不可となり、A社としての対応は長期化します。
現場での対応などに関しては、特定の人物に権限などが集中しないように注意すること、産業医との連携を密にして、会社として代替えのプランを準備しておくことが求められます。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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