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ブログ・高橋 聡
第166回:働き方改革への対応(時間外労働の上限規制(2))
2020年1月21日
今年から働き方改革関連法が施行されています(【図1】)。そこで、働き方改革関連法への対応というテーマで法改正への具体的な対応策について解説してまいります。今回は前回に続き、(時間外労働の上限規制)への対応について説明します。
前号で解説した通り、運送業の管理職、倉庫作業員等一般職に関しては、2020年4月から、月の時間外労働は原則45時間、年360時間以内に収めることが必要となります。さらに、月45時間を超えることができる月数の上限は年6回までとなります。これらの時間数は時間外労働(1日8時間、週40時間を超過した時間数)に関するものですが、この時間数に休日労働時間数を加えた月の時間外・休日労働が2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均で80時間を超えてはいけないこと及び時間外・休日労働時間数を100時間未満としなくてはならないという新たな規制が導入されます。複数月平均80時間以下、月上限100時間以下の規制に関しては「休日労働」を含めることに注意が必要です。この場合の「休日労働」は法定休日労働のことで、週に1回の休日(一般的には日曜日)に出勤した場合の労働時間を指し、土曜日等所定休日の労働は「時間外労働」としてカウントすることとなります。
運送業の運行管理者や営業所長などの管理職、倉庫作業員の労働時間は長時間労働となっていることが多く、2020年4月から、この上限時間ルールが適用されることは実務上、大きな影響があります。管理者は時間外労働の適用対象ではないので2020年からの上限規制は適用されないと考えている会社もありますが、誤りです。中小企業では取締役以上でない限り、労働基準法上の「管理監督者」とは認められませんので注意が必要です。管理職扱いにならないとすると残業代も必要となりますし規制の対象にもなります。適用まで数か月程度しかありませんので、社内で十分協議し、対策を検討していく必要があります。
罰則は「6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金」とされているほか、悪質な場合は「企業名公表」や「書類送検」の対象となることとされており、人材採用や社内外へ大きな影響を及ぼすと考えられます。
対策としては、人手不足の現状からすると困難ではありますが、営業所長や運行管理者に関しては、やはり交代要員を確保することが最大の対策となるでしょう。Gマークを取得しIT点呼を行うこと、点呼補助者を採用すること、交代制・シフト制の導入、役員による兼務なども検討していく必要があります。まずは経営者が意識を変えて、改正に対し取り組むことが必要となるでしょう。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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