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ブログ・高橋 聡
第169回:働き方改革への対応(時間外労働の上限規制(5))
2020年3月10日
昨年から働き方改革関連法が施行されています(【図1】)。そこで、働き方改革関連法への対応というテーマで法改正への具体的な対応策について解説してまいります。
今回は前回に続き、「時間外労働の上限規制」への対応について説明します。
前号では「時間外労働規制」の対応として、ドライバーについては「デジタコ」「ドラレコ」の活用が必須であることを説明しました。時間外労働に関しては「未払い残業代」に関連するトラブルも多発しており、その面でも対策が急務です。「休憩時間」を正しく把握できないと「時間外労働時間数」が長くなってしまうからです。
アナログタコグラフでは、分単位の「休憩時間」を把握することは不可能と思われます。アナログタコグラフの場合はデータをデータ化できる機器がありますので、そのような機器を活用すべきです。4㌧未満のタコグラフの設置義務がない車両についてもデジタコの活用を進めるべきです。休憩時間を正しく把握することは「長時間労働対策」にもなることとなります。
「休憩時間」を就業規則上の60分や90分として毎日同じ時間数を記録している会社がありますが、現実の休憩時間数が毎日同時間数になることはあり得ないです。このような給与台帳や日報集計を行っている会社は労基署などの調査での是正勧告や「未払い残業代」請求に関するトラブルに巻き込まれやすいこととなるでしょう。デジタコなどを使用し精度の高い労働時間数、休憩時間数を把握することは、これからの運送業経営に必須の事項と考えます。
また、荷主のセンターなどで荷物受け渡しの時間指定がある場合に、早めに到着してから指定時間まで空いている時間帯は「休憩時間」と出来るでしょう。このような場合、管理者はドライバーに「指定時間まで自由利用(休憩)とする」旨を明確に指示することが必要となります。指定時間までの時間が明確であればこのような運用も可能です。
ただし、時間の指定がなく、「いつ呼び出されるかわからない」「車両の監視・管理が必要」などという場合は「待機時間」となり労働時間になります。
今後は、このような時間指定についても荷主の協力を得て、文書・帳票で記録を取ることを考えていく必要があるでしょう。
荷主企業もコンプライアンス経営を求められています。時間指定を行うこと、指定時間からの延長は別途料金請求の対象となることなど、荷主企業へも様々な指導がなされています。運送会社もまずは「意識改革」し「デジタコ・ドラレコ」などのIT機器を積極的に使用し、「荷主企業」に折衝・交渉し「時間指定」してもらい、「帳票・文書」で記録を残していくこと、管理者がドライバーに対し、きめ細かく指示し、正しく日報に記録をとり精度の高い労働時間把握を行うことが重要となります。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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