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製品・IT
水素ステーション運営の丸伊運輸 「次世代の子どもたちのため」
2022年6月13日
首都圏を中心に、コンビニやスーパーなどへの食品輸送を手がける丸伊運輸(伊藤公一社長、東京都府中市)は、栃木市に「とちぎ水素ステーション」を建設し、自社で運営。2020年4月の開所以来、主に乗用車向けに水素を提供している。
同社エネルギー販売事業部の責任者を務める古菅敏美氏は、「きっかけは栃木県内の既存の物流センターが手狭になり、老朽化も相まって移転が決まったこと。移転先のこの土地があまりにも広大だったため、何か活用できないかと検討した」という。「もともと、当社の代表が『公道を利用して商売をしているので、地域への貢献など何か恩返しがしたい』という思いを抱いていた。また、『環境問題ではディーゼル車の排ガスがクローズアップされがち』といったことからも、水素ステーションの建設につながった」と振り返る。
同ステーションは外部で製造された水素を調達するオフサイト方式を採用。「水素専用のコンテナが必要で配送は委託している」という。「ステーション内で、都市ガスやLPガスなどから水素を製造するオンサイト方式もあるが、運送事業者が運営する場合は難しいのでは」と指摘する。
ステーションの営業時間は、月曜から土曜の午前9時から午後5時。あくまで一般ユーザー向けの水素充填施設のため、「自社トラックへの充填は1日1回までに規定しており、顧客優先」とし、「併設の物流センターも敷地の奥に配置している」と強調。さらに、「現状では当ステーションを超えると福島県まで充填施設がないため、水素の在庫切れだけは絶対に起こせないという使命感を持っている」という。現在、「一般ユーザーの月間の利用回数は約85回で、1日平均だと3―4回。正直、採算は厳しい」。
同社では、大手コンビニの配送でトヨタ自動車が開発したFC小型トラックを用いた実証実験にも協力している。「ドライバーからは、『振動が少なく、走行音も静かでパワーがある』と好評」だという。
同県南部地域の10店舗を回り、3回転を目安に配送計画を策定。「1回につき5―6分ほどの水素充填で、配送は2―3回転できている。ドライバーとしても、さほど負担ではない様子」。
とは言え、「物流で利用するにはまだ課題も残るのではないか」とも。「物流は線。長距離輸送であればなおさら。ステーションの軒数や配置、24時間営業などが必要になる」。
ステーション建設での投資額について、「国や自治体からの補助金があるとはいえ、かなりの額」と明かすが、「儲けではなく、次世代の子どもたちのために、当事業はスタートを切った」と繰り返す古菅氏。「高圧ガス保安監督者を置く必要があるなど、本業の物流とは異なる事業内容で、気付かされることも多い。講習会を開いたり、常に勉強していきたい」と未来を見据え語った。
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