-
物流ニュース
荷役機器の補助対象に不公平感 なぜ3種だけ?
2020年3月5日
送られてきた1枚のファクスに目を通したトラック事業者は直感した。「不公平だ!」。ファクスの内容は、トラック荷台後部に取り付けるパワーゲート(テールゲートリフター)などの省力化機械の導入費用に対して補助をする、というもの。この事業者の主力はトレーラによるコンテナ輸送で、パワーゲートを導入する見込みは今後ともない。「省力化・荷役の合理化を図らなければならないのはコンテナ輸送分野でも同じ」と事業者は話し、補助の対象機械の設定に疑問を呈している。
ファクスは2月中旬、事業者が加盟する兵ト協(神戸市)から送信されてきた。同5日付で国交省が発表した、「中小トラック事業者向けテールゲートリフター等導入支援事業」を案内するものだ。
事業の内容は、「働き方改革」推進の具体策として、トラック乗務員が携わる現場での「荷役作業の効率化」(国交省発表より)を目指したもの。現場効率化のために事業者が導入する、①パワーゲート②トラック搭載型クレーン(通称『ユニック』)③荷台に搭載する2段積みデッキの、3種の機械について、導入費用の一部を補助するというもの。
ファクスを見た事業者が主張するのは、「荷役作業の効率化」に資する機械には3種以外にもある、という点を踏まえたものだ。例えば、事業者自身がすでに複数台導入している、「ハイリフトトラクタ」と呼ばれる機械がある。1台2300万円。通常のトラクタとの価格差は数百万円あるという。
コンテナ内部への荷役は通常、扉を開けた状態のコンテナ後部からフォークリフトが入り込んでの作業、もしくは手積み・手下ろし作業が求められる。ハイリフトトラクタは、粉粒体の貨物を積載した20フィートコンテナを、前方のカプラー(シャシーとの連結部)部分から、垂直方向に持ち上げる機械。
約40度の角度にまでコンテナ本体が傾き、内部の粉粒体が一気に滑り落ちるため、「荷役作業の効率化」が図れる。事業者でも、輸入された豆類の輸送現場で活躍しているという。
ハイリフトトラクタは、「荷役作業の効率化」が図れる3種以外の機械の一例だ。事業者は、「輸送の現場を知らない者が補助金の立案をしている。こういった機械もあるということを、それぞれの経営者や現場が教えていく必要がある」と話す。
事業者は早速、補助事業の執行を国交省から任される全ト協に電話を入れた。担当者からは、「勉強になります」との声があったという。
全ト協交通・環境部は本紙取材に対して、「補助事業の内容を決めたのは国交省。生産性の向上に資する他の機械も強くアピールしてもらえれば、国交省も(補助を)検討すると思う」と話している。
国交省貨物課は本紙に、「我々だけでは知らないこともあるので、業界やメーカーにヒアリングし、ニーズの大きい3種を補助対象にした」と選定の経緯を話す。また同課は、「過去にもジョルダーレールなど他の省力化機器が補助対象でないのはなぜかといった問い合わせがあったと聞く。補助対象期間(19年12月13日〜20年3月31日)の短い期間の導入になるため量産体制にあるか、なども選定の根拠にした」と話している。
同課によると補助事業は過去数年、各年度の補正予算枠で実施されており、今年度はパワーゲート以外の2種が新たに追加された形。
国の行政機関などからの補助金が一般に適用される「補助金適正化法」は第三条で、「各省各庁の長は、(中略)補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに特に留意し、(中略)公正かつ効率的に使用されるように務めなければならない」と定める。
例えば、今回の補助金の場合、同法でいう「公正」(「公平で邪曲のないこと」広辞苑)はどの部分で担保されているといえるだろうか。貨物課の説明にある「業界やメーカーへのヒアリング」はその一つなのだろうが、今回の指摘のようにそれでもなお、取りこぼしが出てくるようなケース。多種多様な物流現場において、「荷役作業の効率化」に資する機器など、それこそゴマンとある。
機種を限定せず、包括的な表現で補助対象を募集できないものか。貨物課は「個別機器の列挙でなく、一般的な要件としていくことは可能」という。
関連記事
-
-
-
-
「物流ニュース」の 月別記事一覧
-
「物流ニュース」の新着記事
-
物流メルマガ