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労務管理
新型コロナウイルス感染症と休業手当 企業が取るべき対策
2020年6月10日
「新型コロナウイルス感染症と休業手当」について、多湖・岩田・田村法律事務所(東京都千代田区)の田村裕一郎弁護士と井上紗和子弁護士に企業がとるべき対策を聞いた。
使用者(会社)は、「使用者の責めに帰すべき事由」による休業につき、休業手当(平均賃金の60%以上)を支払う必要がある(労基法26条)。しかし、不可抗力による休業の場合(①その原因が事業の外部より発生した事故であり、かつ、②事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしても避けることができない事故の場合)、この支払い義務はない。
両弁護士は、企業内にコロナ感染者が判明した場合の、「感染し、発症した労働者」「感染のおそれがある労働者(濃厚接触者)」「それ以外の労働者」について、それぞれ次のように説明した。
◇
「感染し、発症した労働者」については、都道府県知事が行う就業制限で労働者が休業する場合、休業手当の支払いは不要(厚労省の見解も同旨)。この就業制限がない場合でも、労働者が新型コロナウイルスに感染し発症していれば、労基法26条の前提となる労務提供がなく、休業手当の支払いは不要と考える。「感染のおそれがある労働者」については、感染者が判明した場合、周囲の労働者は濃厚接触者なので、休業させるべき。濃厚接触者である労働者のうち、風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く、強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある等の症状があれば、職務の継続が困難といえるので、休業手当の支払いは不要だが、これらの症状がない場合、休業手当の支払いの有無につき、労使の見解の相違があるので、話し合いの内容、各種のリスク、外部専門家の意見などを踏まえて判断する。
「それ以外の労働者」については、感染者が判明した場合、現場である事業場を消毒するため、当該事業所を閉鎖することがある。閉鎖期間中に健康な労働者を休業させた場合、休業手当や賃金の支払い義務の有無が問題となる。この点は労使で見解が分かれるので、事業所の一時閉鎖の有無や期間、他の配転場所の有無、テレワークの実現可能性、雇用契約の内容、労使の話し合いの内容、助成金の受給可能性、ビジネスリスクなどを踏まえ、現実的な対応策を検討する必要がある。
次に、企業内にコロナ感染者等が出ていない場合については、東京都等に特措法に基づく緊急事態宣言が出されている。もっとも、運送業には法的根拠に基づく休業要請がなされていないので、仮に運送事業者が労働者を(業績悪化等を理由として)休業させた場合、前述の①を満たさず、(緊急事態宣言がない場合のみならず、宣言がある場合でも)休業手当の支払いが必要と考える。
◇
以上、労基法26条を前提に、60%の休業手当の要否を解説したが、就業規則などにて民法536条2項の適用が排除されていない場合、労働者から、100%の賃金を支払えとの要求が出てくる可能性がある。なので、外部専門家と相談の上、就業規則などの改定内容及び時期も早急に検討すべきとしている。◎関連リンク→ 多湖・岩田・田村法律事務所
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