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物流ニュース
東洋鋼業 物流を地面から支える、グレーチング業界に特化
2016年6月14日
「大型車が通ると、製品そのものへの影響がなくても、製品を支えるコンクリートが割れてしまうかもしれない」。東洋鋼業(兵庫県尼崎市)の山根基嗣社長の、そんな言葉を聞いたとき、こうした製品の存在が現在のような大型車の通行、物流を支えているのかと、改めて技術が成り立ってきた過程に思いを馳せた。
道路端の側溝に被せられた、グレーチングと呼ばれる格子状の蓋。同社の製品の一つは、その蓋の受け枠の部材だ。直角に曲がった鋼材で、両端があえて不等辺になるように作られている。長い辺をコンクリートの接地面に持っていき、短い辺はグレーチングそのものの厚みに合わせる。等辺にするより、重量的にカットできるといった合理化を、ニッチな分野から提唱してきた。
「受け枠の厚みは6mmのものがほとんど。しかし4.5mmでいいのではと研究もされている」。同社長のそんな言葉は、大型車の重量圧でコンクリートが割れないような厚みにする、かつ部材を合理化するには、といった両面からの要請を受けたものだ。
山形鋼は等辺ものと不等辺ものに大きく分類される。主に電炉で生産される等辺は、一度に500トンから1000トン単位で大量に作られ、鉄のグローバル化も手伝って価格競争が激しい。同社は5年前から不等辺、それも「日本一小さい不等辺山形鋼」をうたって差別化し、グレーチング業界に特化。鋼材市況に左右されない体制を目指す。
模索を続けている最中に発災した「東日本大震災」の津波。斜面を登り切れないで亡くなった多くの人たち。「緊急時に素人でも階段を作れるように」と開発したのが、連結式の簡易階段「キズナダンダン」だ。持ち運びしやすい軽量性と山形鋼の堅牢性を生かした。斜面に打ち込んでいく様子の動画をHPで上げたところ、避難計画確保のため高齢者施設などから注文があった。
21年前の「阪神・淡路大震災」にも、同社開発の「ラムダ形鋼」を支柱に使った倉庫用ラックが強みを発揮。「揺れに柔軟であるため、免震作用があった」と分析する。
「今の日本の状況は『鉄で何か作ろう』というものではない。だからこそ、うちでしか作っていない鋼材を作っていく」。同社長の柔和な顔の奥に、ひそやかな闘志を見た。
◎関連リンク→ 東洋鋼業株式会社この記事へのコメント
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