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物流ニュース
ドレージ業者の負担増?SOLAS条約改正
2016年6月30日
SOLAS条約(海上人命安全条約)の改正に伴い、今年7月1日以降、輸出コンテナについて総重量の明確化が義務付けられる。 荷送人(メーカーや商社、フォワーダーなど)は、規定された方法を用いて実入りコンテナの総重量を把握し、船積み書類に署名する必要がある。総重量の記載や確定方法について、責任の所在を明らかにすることが目的だ。主に荷主や船会社に関連する法改正ということもあって、運送事業者からの関心は高くないが、重量の計測が義務化されることで、海上コンテナ輸送業者の負担が増えることが懸念されている。
条約改正の背景には関連する事故の多発がある。輸出者が申告する重量でコンテナを積んだものの、実際の重量と誤差が大きく、荷崩れや船舶の転覆・破損する事故が発生している。コンテナ1本の誤差が船舶全体では膨大な重量となるためだ。
国交省海事局検査測度課危険物輸送対策室は、「従来から貨物の総重量については記載されており、新たに作業工程が増えるわけではない」とし、「大きな混乱が生じるとは想定していない」としているが、現場からは不安視する声が上がっている。首都圏で輸出コンテナ貨物を取り扱うドレージ業者は、「船積み書類に記載されている重量は必ずしも正確な重量を示しているわけではない」と指摘する。計測を行わず、過去の出荷事例や目測によって記載しているケースも少なくないからだ。
コンテナ重量の確定方法には、(1)バンニングされた実入りコンテナ自体を測る「総重量計測」(2)各コンテナ内に梱包する物(貨物品、パレット、固定材など)の重量を個別に計量し、コンテナの自重を加算する「足しあわせ算出」――の二通りがある。
いずれの方法でも計量法に基づく特定計量器か、誤差が5%内に調整された計量器を用いる必要がある。行政では「足しあわせ算出」を推奨しているが、この方法では計測できない貨物も多い。規格化された固定材を用いている場合は良いが、木枠やチェーンなど、個々の貨物によって使用形態や量が大きく変わってしまう固定材を使用している場合、固定材単体の重量を算出することは困難だ。また、大型機械類をバラして複数のパーツをコンテナに詰め込んでいるような場合も足しあわせでの計測は容易ではない。
取り扱う貨物が「総重量計測」を行う必要がある場合、ドレージ業者の業務にも影響が出る可能性がある。
バンニングを行う場所に計測器がない場合は、 実入りコンテナを載せて、規定を満たすトラックスケールがある台貫所などへ立ち寄る必要があり、その分だけ手間や時間がかかる。台貫所は日中しか営業しておらず、事前に計測しておくことができないため、出荷スケジュールにも影響が出そうだ。
輸出入コンテナを取り扱うマルストランスポーテーション(神奈川県川崎市)では、SOLAS条約改正に伴う混乱を予想して、荷主向けに説明するなど対策を整えている。同社陸運部の井上真之次長は、「形状や性質から『足しあわせ算出』が困難な貨物については、台貫所まで移動するための手間や待機時間を考慮して、運賃とは別に台貫手数料とシフト料を設定して対応する」と話す。
また、京浜港を中心に通関業を行っている事業者は、「荷送人に代わって重量を確定する登録確定事業者として届け出ることはもちろん、自社で台貫を購入することも検討している」と話す。
船会社やフォワーダー、通関業者にはある程度の周知がなされている一方で、陸送を担当するドレージ業者や海コン業者には情報が行き届いていない。手間や時間が発生する可能性があるだけに、輸出コンテナ貨物を取り扱っている場合は、重量の確定方法や対応について、荷主に確認をとっておく方が賢明だろう。この記事へのコメント
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