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物流ニュース
伏見倉庫 山本社長「地元の土地と人との縁に感謝」
2016年9月27日
経済の血液にたとえられる物流。なかでも倉庫業は、物流の結節点として重要な役割を果たしている。現在の倉庫業は単なる「モノの保管」だけにとどまらず、付加価値を高めたサービスの提供が求められている。倉青協のメンバーである伏見倉庫(京都市伏見区)も、付加価値を提供する企業の一つだ。食糧倉庫としてお米の保管に携わり、京都の食卓を支えてきた。今では常識となっているお米の低温保管を昭和51年からいち早く開始し、安全・安心保管のノウハウを蓄積している。同社3代目の山本章雄社長に、これまでの歩みなどについて聞いた。
伏見の造り酒屋が出資してできた同社は創業から72年目で、現在の場所に移転してからは50年近くになる。メーンで扱うお米は温度のみならず、湿度が重要なカギを握り、湿りすぎでも乾きすぎでも悪影響となる。空気の循環が良くなるよう、あえて現在主流の箱型の倉庫ではなく三角屋根の倉庫を採用するなど、品質へのこだわりには余念がない。伏見の酒造メーカーの酒米や、お酒も扱っている。
お米にこだわる同社は農産物の検査機関でもあり、農産物検査員の資格を社長はじめ、多くの社員が保有。山本社長は「主食用玄米は、一から三等、そして規格外の等級があり、検査員は正確に見分ける能力を持っている。農産物の検査は国の管轄だったが、十数年前から民間に委託された。自分たちの扱う荷物について理解して欲しいという思いから、現在でも社員には検査員の資格取得を推奨している」と話す。さらに品種、年産や産地など保管する米の種類は複雑を極めるため、保管作業の質の高さが重要となる。そのため同社はアルバイトやパートを採用せず、全員が正社員。一人ひとりが当事者意識を持ち、主体的に仕事に取り組めることを目指している。
山本社長は、物流業に携わる前は銀行員として7年働いた経歴を持つ。倉庫業と金融業は一見接点がないようにも見えるが、意外なところに共通点があるという。「倉庫も金融も、預かるということが価値になり、お金を生む。また、何よりも信用が重要」。
同社の創業の地である京都は、かつて道路の整備が大幅に遅れていたことで、大きな倉庫がほとんど建設されてこなかったという特殊な経緯がある。「大企業ではできないような細かな対応が可能なのが当社の強み。荷主の要望に合わせるように、これまで成長してきた」。京都という地で唯一無二の企業となり、より良いサービスを提供するためには、倉庫業青年経営者協議会(倉青協)など、全国規模のネットワークも必要だと考えていたという。
倉青協には、約5年前に冨士倉庫運輸の兼元邦浩社長の紹介で加入した。「冨士倉庫運輸とは会社が隣接しており、以前から交流があった。倉青協に加入してから全国に仲間ができ、社員同士も互いに訪問し合うなど、積極的に交流している。倉青協の太宰栄一会長には全国食糧保管協会でもお世話になっており、リーダーシップの取り方など日々勉強させていただいている」と話す。「同じお米を扱う仕事でも、仕事の質は年代ごとに変わっている。そんな中で、時代の流れや商流を見て、その流れに乗る倉青協のメンバーを見て刺激を受けている」。
業務上で、安全・正確に貨物を取り扱うことが一番の社会貢献だが、平成17年にはいち早く太陽光発電システムを倉庫屋根上に設置するなど、省エネにも取り組んでいる同社。「地元である京都にとって、何が一番良いことなのかを常に念頭において事業を展開している。これまで、さまざまな方にお世話になり、厳しい時を乗り越えてきた。伏見の土地と人との縁に感謝しながら、今後も経営していきたい」と話し、高いレベルの物流品質が求められる案件を強みに、事業を展開していく。この記事へのコメント
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