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物流ニュース
宅配ボックス普及 再配達問題解決へ、事故など課題も
2017年7月7日
ヤマト運輸などの大手宅配事業者が相次いで運賃値上げを打ち出すなど、揺れに揺れている宅配業界。中でもドライバーを苦しめているのは2割に上るとされている「再配達問題」だ。その解決策として考えられているのが宅配ボックスだが、パナソニックとあわら市(福井県)が実施した実証実験では、再配達率が49%から8%にまで減少するなど、その効果は疑いようがない。しかし、課題も残されている。今回は、今後普及が格段に進むであろう宅配ボックスの課題について調べた。
パナソニックは6月8日、宅配ボックス実証実験の最終報告結果を発表。あわら市で実施された同実験では、再配達率が49%から4か月平均で8%まで減少した。宅配ボックス設置後の荷物配達総数は2258回で、1回目で受け取られた荷物は1062回(47%)、宅配ボックスで受け取られた荷物は1013回(45%)、再配達となった荷物は183回(8%)だった。宅配ボックス設置前の再配達率は49%だった。
再配達をなくすために宅配ボックスの普及は欠かせない。非常に便利な宅配ボックスだが、課題がないわけではない。東京消防庁は平成28年7月1日、「宅配ボックスに子どもが閉じ込められる事故に注意」という発表を行った。7歳男児が友人とかくれんぼをしていた際、マンションエントランス部分に設置されていた宅配ボックス内に隠れた。その後、何らかの原因で宅配ボックスの鍵がかかり、出られなくなった。
東京消防庁では「管内で同様の事故が3件発生している。いずれも大事には至ってないが、特に気温が上昇する夏に閉じ込められた状態で長時間放置された場合、熱中症などの重大事故に発展することが考えられる」と注意を促しており、「昨年の発表後は同様の事故は発生していない」としている。
現在、急速に宅配ボックスが普及しており、夏場に向けては子どもに対する安全面の注意が必要だろう。メーカー側の対応を見ると、ナスタ(東京都港区)は「まず、お子様を落ち着かせてから、内部に緊急解錠用レバーがあるので、同レバーを引くようにお子様に指導していただきたい。また、管理会社・所有者が緊急解錠用のカギをお持ちなので、連絡して欲しい」としている。また、日本宅配システム(名古屋市東区)では「ボックス内に人が入ったことを感知するセンサーがあり、自動的に扉が開き、閉じ込めが起こらないようになっている」と説明している。
また、宅配ボックスが犯罪に利用されているケースもあるという。神奈川県警で4月に開催された空き部屋対策推進連絡会で、特殊詐欺や不正購入品の受け取りに使用される可能性があるとの意見が出た。同連絡会で配布された資料によると、「近年、賃貸マンションやアパートの空き部屋が金品送付型の特殊詐欺や口座詐欺、ネット通販を利用した窃盗事件などの金品の受け取り場所として悪用され、新たな犯罪インフラとして構築されている実態が判明した」と指摘。宅配ボックスも不正購入品の受け取り場所として利用されるのではないかという意見が出された。
同県下の空き部屋利用犯罪の検挙状況は、平成27年20件・12人、同28年44件・31人となっている。同県警では「関係事業者などに対する講演の実施や業界紙などへの掲載、チラシの配布などによる注意喚起と情報提供の依頼、郵便受け装着用のプレートなどの配布などにより、検挙件数・人員共に前年から倍以上の効果を上げた」としている。今後、同様の犯罪が行われる可能性が高く、宅配ボックスの普及には、事故や犯罪防止についても一考しておく必要があるようだ。この記事へのコメント
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