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物流ニュース
これでいいのか 高額見積もりを示して「お断り」
2018年3月29日
引っ越しや宅配分野の「物流危機」がこの1年、大きく扱われたことで、消費者や荷主の意識・姿勢に変化が見られる。ひるがえって物流事業者のそれ、つまり契約に関する意識や姿勢に変化はあっただろうか。人手や車両の不足といった業務面への逐次対応に忙しいこの時期ではあるが、それだけに留まらずに今後の経営レベルでの備え、もしくは自らが拠って立つ物流サービスのプラットフォームを保持するといった考え方が求められているのではないか。
「市内間を移動する一般家庭の引っ越し客に、運賃だけで18万円という見積もりを出した物流大手があるようだ」。引っ越しサービスも手掛ける兵庫県内のトラック事業者はそう話す。過日、消費者宅を訪れた事業者の見積もり担当者から耳にしたという。担当者は同じ作業の見積もり金額として8万円を提示。見積もり客は「そんなに安くやってもらえるんですか」と驚いていたという。
事業者は、「物流大手にとって18万円というのは、体のいい『お断り』のセリフだったのだろう。高くて断ったとしても、消費者には運賃を吹っ掛けられたという感覚が残る」。そのうえで、「吹っ掛かけられた相手が国内有数の物流大手となれば、消費者に残るのは、その大手の名前だけでなく、物流業界全体に対する不信感になってしまわないか」。「人手不足による引越難民」という言葉が連日各メディアに流れる中、「吹っ掛けて断るのではなく、素直に『人手不足でして…』と言えなかったのか」とも。
繁忙期、メディア環境といった各要因がそろった中での吹っ掛け。では、そうした要因がそろい切っていない企業物流での運賃状況はどうか。
国内大手の乳製品メーカーが、物流業務を委託する「物流協力会社各位」宛てに書面を送付したのは昨年11月。同月4日から改定施行された標準運送約款に関して、荷主としての見解を示したものだ。
書面には、「現在、弊社(メーカー)が貴社(協力物流業者)と契約している料金は総じて適正な水準であると認識」していることが表明され、現行料金を「運賃と付帯作業に分解してお支払いする形に変更したい」と記される。つまり、運賃と料金を別建て収受することを定めた改定標準約款を逆手に取り、現行の支払い総額を「一切上げるつもりはない」ことを表明したものだ。
書面を受け取った物流会社によると、3月中旬になってもこの書面をもとにした何らかの動きやコミュニケーションは、メーカー、各物流会社のいずれからも聞こえてきてはいないという。この物流経営者は、「このままだと総額は上がらず、人手不足対策をしたくても原資がない状態が続く」と話す。
このメーカーに入るトラックは、常傭の形をとることが一般的だという。繁忙期ゆえの「トラックが足りない」も口に出せない状態。企業物流に関してはメディアなどの情報環境も整ってはおらず、前出の引っ越しを巡る取引とは打って変わって静かな状態が続く。
改定約款施行後も企業物流では、新たに待機時間や積み込み料金が設定されたといった話はあまり聞かれない。従来から「残業料金」といった類の設定が契約段階でなされてきた物流業務で、その扱いが明確化されるようになったとの声がぽろぽろと聞かれる程度だ。
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