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物流ニュース
ポイントは家族にあり 採用した人材の離職を防ぐ
2018年4月2日
少子高齢化に拍車がかかる昨今、人材確保に苦慮する企業は多いが、採用した人材の離職を防ぐことも重要な課題となっている。新卒採用を行っている福岡の企業が、ある面白い取り組みを始めた。効果はすでに出ており、今年度は一人の離職者も出していない。離職に歯止めをかけるポイントは、「家族」にあると語る。その取り組みについて、話を聞いた。
パティスリーイチリュウとして洋菓子の製造販売を手掛ける一柳(納富誠一社長、福岡県福岡市)は、職員定着の一つの手段として、昨年から新しい取り組みを始めた。新卒採用した職員の家族に、子どもに宛てた手紙を書いてもらうのだ。手紙の依頼は、入社する本人らには内密で行われる。親は書き終えた手紙を同社へ送り、それを入社2日目の研修の最後に、同社職員が淡々と読み上げる。読み手である第三者の感情が入らないほうが、親の言葉がストレートに伝わる。「ご両親の深い思いが込められているため、感情移入をせずに淡々と読む方が大変」と話すのは同社で専務を務める納富輝子氏。
手紙をすべて読み終えたら、30分ほど時間を取り、今度は彼らが両親へ手紙を書き、ポストへ投函する。「もちろん親には内緒。投函後、午後5時からは、ご両親を招待しての懇親会を開いている」懇親会では、同社の社長から理念や自社の取り組みなどの説明がされる。その場で、新人の直属の上司も紹介される。上司自らが、部下となる職員に花束を渡すそうだ。
「ご両親はそこで、自分の子の上司の顔と名前を知ることができる。どんな会社で、どんな上司の元で仕事をするのか、把握できるようにしている」職員の「会社」と「上司」を親に知ってもらう。そうすると親が、いざという時に支援してくれるのだと同専務は話す。悩みを抱えた時、仕事を辞めたくなった時、彼らが仕事を続けられるように親が助言してくれる。その家族の支えが、何より大きいという。
そのおかげか、今年度は誰一人辞めることなく仕事を続けている。「例年であれば、必ず数人は辞めていた。この取り組みのおかげかどうかは、今後データを取らないと分からないが、少なからず影響はあると思っている」
同社で行っている職員定着のための取り組みは、もちろんこれだけではない。「会社を辞める原因の8割が、人間関係と言われている。どんなにやりたい仕事でも、職場が楽しくなければ仕事もつまらなくなる」と同専務。職場の人たちとは、家族以上の時間を一緒に過ごす。家族間でさえ、ルールやマナーを忘れてしまえば、仲がこじれてしまうだろう。他人の集まりである会社なら、なおのこと気を使う必要がある。そこで、同社では「敬語で話す」「ニックネームで呼び合わない」などのルールを徹底している。秩序とマナーを守ることで、誰にとってもフラットな人間関係が維持できる。
「きついと言える環境をつくることが大事。仕事とは気合と根性で行うものではない。新人は特に、最初の数年は自分の技術を磨く時。相談でき、モチベーションを維持できる環境かどうかが、定着に大きく関わる」また、同社では、社員らが独自の解釈をしてしまわないよう、必要なことは全て明文化している。共通言語で、共通理解し、共通の価値観を社員全員が共有できるように。
「同じ方向を向くために絶対に必要なこと。その意識が、仕事へのモチベーションの維持に一役も二役も買う」と同専務は断言する。
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