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物流ニュース
離職率を下げるには 「入社3年で辞職」が4割
2018年4月23日
新卒者の離職率を見ると、他産業に比べて若干低いとはいえ、運輸・郵便業では40%近い人材が入社3年で辞職している。慢性的な人材不足に悩む物流業界にとって、この離職率の高さは問題だ。ただでさえ若者の応募が少なく、高齢化が進む中小の運送事業者は、どのようにすれば離職率を下げることができるのだろうか。関係者に話を聞いた。
厚労省が発表している「学歴別の就職後3年以内離職率の推移」を見ると、高卒では、ピークだった平成12年の50・3%より減少しているが同26年では40・8%。大卒でも最も高かった同16年の36・6%から同26年は若干減少して32・2%となっている。
業種別で見ると、運輸業・郵便業は平成26年の高卒離職率は35・6%(全産業平均は40・8%)、大卒でも26・8%(同32・2%)となっている。厚労省によると「平成15年以降は業種別の離職率を公表しており、毎年、離職率の高い業界は決まっている。あくまで推測だが、離職率の高い業界は対人関係などのストレスが高い職種が多い傾向にあるようだ。それ以前はわからない」と、コメントしている。
また、離職理由を見ると、その他を除くと25歳から29歳の男性では「給料など収入が少なかった」が最も多く、19・3%。次いで、「労働時間、休日などの労働条件が悪かった」が16・5%となっている。若手のドライバーを確保するには「高い給料と働きやすい労働条件」が必要なことがわかる。
では、どのような取り組みが効果的なのか。厚労省が出した「人材確保に『効く』事例集」から運送事業の取り組みを抜粋しよう。
運転を「業務」として捉えている人材の応募が減っている。運転は簡単と思って入職するため、研修期間中に退職してしまう者が多い、という問題に対しては、「入職者は採用時の業務説明に対して『できる』と回答することが多いが、実際には業務に就いても対応できずに退職してしまう。そこで、早期離職を防止するため、採用時に業務説明を徹底して行う」ことが重要と回答。
採用者が新しい職場に受け入れられていないと感じてしまう、という問題には「採用者は新しい職場に受け入れられるかどうか、緊張状態にある場合が多いため、先輩職員が自分の業務に忙しく無関心だと、それを過剰解釈して、『受け入れられていない・冷たい・ 厳しい』と感じて早期離職につながる場合が多い。先輩職員に採用者の受け入れ姿勢を指導する。具体的には、受け入れる側の先輩職員に対して、このような採用者の心理状態を理解させ、早期離職をさせないよう、採用者を歓迎し話しかけ、温かく受け入れる姿勢を示すよう指導する」と回答している。
「離職率を改善させるためには、まずは従業員の意見を聞き取り、従業員満足度を高めていくことが大切」と話すのは、日本社会人育成協会(東京都千代田区)の藤巻勇輝代表理事。「平成生まれの社会人が離職する理由として、キャリア成長が望めるかどうか、ということがある。若い人たちは人間関係や福利厚生以上にキャリアアップを望む傾向にある」という。
「自分自身が働いた際、3年後、5年後、10年後がどうなっているのか、イメージできるかどうかが大きな理由となっている」と指摘する藤巻代表。「さらに、転職に関して否定的でない人間が増えており、本人がキャリア成長を望めば、周囲も反対しない状況にある。転職を後押しする事例も珍しくない。会社として将来像を見せられるかどうかは、中小企業にとって、とても大切なことになっている」という。
「うまくいっている取り組みとして、意見箱を作るという方法がある。自分たちの意見に会社が真摯に取り組んでくれると分かれば満足度が上がり、一生懸命に頑張ろうと考える」という同代表。「まずは従業員の意見を聞くところから始めた方がいいでしょう。良い意見を出せば自分を引き上げてくれると知らせることが大切。また、少し矛盾するが、自分から意見を出すことをいいことだと思っていない人も少なからずいる。こちらには『自分の意見を出すことは会社にとっても大切なこと』ということを教育する必要がある。これをきちんと伝えることが大切」と説明する。
また、「『2000年の壁』というものがある。2000年を境に、平均年収が伸びていた時代から下がっている時代に変化した。年功序列が崩壊し、指示されていたことをするだけの時代から、指示されることをしているだけでは年収が下がる時代になった」という藤巻代表。「ここから若者の意識が変わった。離職率を改善させるためには、意見を聞くことや社員間の交流を活発にすることなどさまざまな取り組みが必要」と説明する。
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