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    事業承継問題 運送業界は「火急の問題」

    2018年7月23日

     
     
     

     「今後2〜3年の間に、運送事業者の数は2万社近く減少する」。そんな予測が専門家たちの間で、ささやかれている。事業拡大や自社存続のためにM&Aに乗り出すか、親族あるいは従業員への承継を行うのか。いずれにしても、淘汰の波に呑まれないために、事業承継に関して対策を講じるのは急務となっている。

     福岡県事業引継ぎ支援センターの奥山慎次統括責任者は「様々な業界での承継に携わっているが、物流業界だからといった業界による承継の難しさがあるとは感じない」と話す。さらに「どの業界でも中小企業の承継問題が出ているのは、引き継ぐことを考えずに事業をやって来たツケが来ているのではないか」と指摘する。少子高齢化による慢性的な人材不足もまた、事業承継へ影を落としている。同氏は「極端なことを言うと、人口が減っているのだから、承継できない企業があるのは当然」とも述べる。しかし、可能性がある限り自社存続のために承継を考えるのは、経営者としては自然なことだろう。では、どうすれば良いのか。「承継する上で大切なのは、企業拡大を優先するのではなく、いかに次世代に引き継いでいくか、長いスパンでのビジョンを持つこと」と述べる。また、同氏の経験上、大変なのは第三者への承継ではなく、親子間の承継だという。「親子の関係では、うまくいかないことが多い」と同氏。先代社長が口を出しすぎることに大きな原因がある。引き継がせるからには、せっかくの承継チャンスを自らつぶすことにならないよう、手放す勇気を持たなければならない。

     畜産生体輸送をメインとする防長運輸産業(福岡県糟屋郡)の伊東元司社長は、父親である先代社長から事業を引き継いだ。正式に社長に就任する以前から、先代社長とは意見の相違による衝突を繰り返してきた。「親子だからか、かなり激しく意見をぶつけ合ってきた。絶縁寸前までいったことも何度もある」と同社長は話す。父親である先代社長だけでなく、経理を担当していた母親とも、それは同様だった。仕事の進め方や配車においても色々と言われてきた。現社長は「一連の流れの上で、結果的にそうせざるを得ない業務に関しても、ある一点を見て口を出す。それがまた気に障った」と話す。次第に現社長の心には「承継」ではなく「会社を乗っ取ってやる」という熱意が芽生えてきた。タイミング的にも、家畜売買の市場での取引に変化が出始めており、現社長にとって好都合だった。それまでトラック1台に乗る頭数での売買だったものが、小ロットで購入する畜産農家が増え、それに伴って輸送形態が積み合わせへと変化した。それに合わせて、同社でも買い付けたその場で、各農家の頭数を聞き取り配車していく。臨機応変な輸送に対応できる同社に、取引先からの信頼はより深まった。「先代は、そういったやり方はしてこなかった。込み入ったやり方を見て、逃げたかったんじゃないか」と現社長は言う。結果的に、先代は「認めざるを得ない」という現実に直面する。それ以降は、ほとんど口出しされることはなくなった。現社長は「結局、人として超えられるか、認めさせるまで努力できるかどうかが大切なのではないか」と自身の承継を振り返る。同社では、畜産生体輸送の業界では先駆的な業態を構築しつつある。しかし、現社長は「次世代に引き継ぐことも考えるが、一方で会社をたたむのも一つの仕事と捉えている。負債を残さず、いつでもたためる状態にしておくのも経営者の責任。捨てる覚悟を持ちつつ、会社にとって、社員にとって、何が幸せなのかを考えなければならない」と断言する。

     第三者事業承継は、親族間の事業承継とは趣が異なる。企業買収という側面もあるからだ。第三者事業承継を行ったLOGI・フロー(福岡県糟屋郡篠栗町)の岡本高士社長に話を聞いた。同社はチェーンストア向け物流や九州を拠点とした周辺各地への物流に特化しており、輸送コストや労力を大幅に削減する仕組みを提供し、通関から最終納品までを一貫して物流代行を行う総合物流企業。同社が事業承継として選んだのは九州・福岡でおよそ30年、物流機器の修理、メンテナンス、不用品の買い取りや中古品の販売を行う企業だった。「カゴ車修理ではいわゆるニッチトップ」だったコアテック・九州(同宇美町)は、先代の島田正道社長が立ち上げた。島田社長が大病を患い、営業にも限界を感じていたところだった。岡本社長は「カゴ車、パレットの需要は伸び、ニーズはある」と同社の事業承継に手を上げた。「事業承継を行うことにLOGI・フローからの反発はなかったが、創設からわずか1年少しでの購入は驚かれた」という同社長。肝心なのは、「乗っ取られるという雰囲気をなくすこと。現場は会社愛があり、そこの文化もある。まずは現場に安心感をもたせること」と主張する。そこで「従業員間の交流をもたせ、それぞれの会社のカラーを合わせる」ことを始めた。現在は組織として会社を束ね、今まで以上のパフォーマンスをみせる。「子どものように可愛い、創業した会社だからこそ、先代の思いは並々ならぬもの」といい、「毎日のように熱い思いを語っており、日々膝を突き合わせた」という同社長。思いを承継し、現在の会社とのシナジー効果をもたらす事例だと言える。

     
     
     
     
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