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射界
2018年9月10日号 射界
2018年9月17日
古典的な書物に「義」という言葉がよく登場する。もともと「正しい」の意だが、人間として当然守らなければならない正しい道を表す言葉である。その一つに「仁は人の心。義は人の道なり」と教える文献があり、仁をもって人を思いやり、義を重んじて人の道を歩みなさいと教示している。
▲これを今日的に表現すればコンプライアンスとなる。法律や社会的ルールに従い誠実に行動することで、健全で安全な社会秩序が維持され、人々は安心して暮らすことが保障されている。それにも関わらず最近、官民を問わず不誠実な行動が指摘され、世の糾弾にさらされている。賢人の一人が諭す通り、「利によって行えば怨み多し」の結果を招いている。
▲このように、範を示すべき立場の人が「私利に走る」傾向が顕著になって、これに倣う人々も現れて「義」を差し置いて自利を追う姿が見られる。それがいつか我が身を滅ぼすことになるが、範を垂れるべきトップ層にまで波及するのを危惧する。歪んだ歩みはやがて国力の衰退すら招きかねない。バブル経済の弊害を反省した当時の謙虚さえも忘れている。
▲空しさを埋めるには強制力を持った法律で規制するのが手っ取り早い。違反すれば罰則を課せばよいからだ。しかし半面、必ず罰則逃れの抜け道を画策する手合いが出てくるから、それを上回る「義」の効用に期待したくなる。「義」に反しても罰則はないが周りの非難に抗しきれず自滅の道をたどるだろう。「利を見て義を思う」ことの大切さを再認識したい。
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