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射界
2019年6月10日号 射界
2019年6月24日
「世間は張り物」という言葉がある。張り物とは、芝居などで使われる木枠に布や紙を貼って作る道具のこと。中身は空っぽだが観客に、それらしく見せる舞台演出だ。狭い空間を広く見せ、巧みな遠近感を演出する効果が期待される。厳しい世間を生き抜くには、ある程度の「張り物」も必要だ。
▲だが、「張り物」が過剰になってはいけない。芝居でいう「張り物」は世間で「見栄」というが、人によって多少の差はあっても社会常識が許す範囲で「見栄」を張って暮らしているのが現実。問題は「見栄」の度合い。すぐバレるような「見栄」だったり、大げさになっては逆効果で、その後の信頼度にも影響するので、世俗な表現だが〝カッコよく〟したい。
▲「人は見た目が大切」と一部で言われる通り、その場に見合った服装を求められる。雰囲気を損ねるような華美な服装や、必要以上の厚化粧が敬遠されるのも社会の常識。「高く登ろうと思うなら、自分の足を使え。高い所へは他の人によって運ばれてはならない。人や馬の背中に乗ってはいけない」と諭すニーチェ(ドイツの哲学者)の言葉を思い出したい。
▲常識が許す程度の「見栄」で済ますか、嘲笑される〝ホラ吹き〟になってしまうか、その線引きは微妙。ここで言えるのは「見栄」を聞く立場になって客観的に考えることの大切さである。すぐバレるような「見栄」を張っている人にはその重要性が理解できない。いつも自分サイドからしか見ていないからだ。そんな人を反面教師として反省の材料にしたい。
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