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射界
2019年7月22日号 射界
2019年8月12日
ニコロ・マキャヴェリの『君主論』が再人気を呼んでいる。理由は分からないが、18世紀まで〝悪徳の書〟とまで言われ、描かれた権謀術数は「人を欺く目論見」と酷評されて排斥された歴史がある。それがいま、現代のビジネス社会に大きなヒントを与える教科書とまでいわれる人気には驚きだ。
▲〝マキャベリズム〟を詭弁の典型と評し、それを駆使して相手を論破する手段を軽蔑した経緯もある。『君主論』で、チャンスについて彼は「何かを成し遂げたいと思えば、まず先に準備すること。幸運の女神が微笑んでくれたときは、準備万端整っていることが大事だ」とし、チャンスは「すぐ捕まえないと逃げてしまう」と説く。我々がよく知る言葉でもある。
▲もともと『君主論』は経営指導書として書かれたものではない。戦乱の中を生き抜くヒントを紹介したに過ぎない。これが複雑で多様性にみちた苦悩や困難に直面した経営者に、なにがしかの大きなヒントを与え、それが再人気を呼んだともいえる。苦悩の中身や解決の道標が、4世紀を経た現代に通用するのも驚きで、マキャヴェリの先見性と見識にも脱帽だ。
▲『君主論』で、彼の主張を代弁すると、大きく分けて「困難な時代に人を巧みに使いこなす」「チャンスを逃さず勝利をつかむために」「油断や怠慢を待ち受ける罠」、加えて「頭脳を進化させるために」の具体的言動を求めている。時代は深化し複雑化する傾向にあるが、基本的な部分では変わっていない。環境が進化しても基本は変わっていないことを知る。
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