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射界
2019年8月12日号 射界
2019年9月2日
諺(ことわざ)がもつパワーは大きい。短い語句で鋭く真理を衝いてくるからだ。しかもリズミカルな表現が覚えやすさを誘う。ときに人生の真実を鋭く衝いて悩みから覚醒させてくれる。だが数ある諺の中には相矛盾するものも出てきた。さてどうする。自分の都合に合わせることになろうか。
▲勝手な振る舞いと非難される前に「嘘も方便」と逃げ口上に走るが「嘘は泥棒の始まり」の教えも忘れてはならない。「渡る世間に鬼はいない」と甘えていてもいけない。「人を見たら泥棒と思え」の時代だ。「急がば回れ」と鷹揚に構えていると「善は急げ」の呼び声が励ましてくれる。だが心配ご無用。「残りものに福がある」とも。世の中、矛盾だらけだ。
▲スイスに伝わる古い教えに「ことわざは、しばしば互いに角突き合う」と矛盾をほのめかしており、わが国だけの現象ではない。よく観察すればこの浮世、矛盾だらけかも知れない。どこかに、なんらかの〝二律背反〟含みの感じだ。先進的イデオロギーを掲げる一方、前例踏襲に固執する保守集団が対峙する。そんな中から新秩序が生まれ新しい時代を創る。
▲わが国では古く、「果報は寝て待て」と諭してきたが、そんな悠長は許されない。西欧には「福を見つけるには、くたびれるまで歩け」(トルコ)と教え、「眠っている狐は鶏にありつけない」(英仏)とハッパをかける。言わずもがなではあるが、諺は庶民の暮らしの中から誕生した知恵で、人々の暮らしを支えてきた経験知でもある。追体験して味わいたい。
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