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運送会社
「経営者が本気になればできる」実証
2009年12月2日
競争激化で運賃水準が下落傾向にある一方、コンプライアンスの徹底などコストアップ要因が相次ぎ、トラック業界はいま、利益の出にくい業種になりつつある。中小・零細はその傾向がより顕著で、トラックの保有台数が20台未満では、赤字企業が黒字企業を上回るというデータも、トラック協会などの調査で明らかとなっている。そのためか、「法律を守れば事業は成り立たない」との悲痛な声も聞かれる。
しかし、わずか10台のトラックの保有で、利益を出している会社がある。全車両にカーナビ、ドライブレコーダー、バックアイカメラを装備するほか、Gマークを取得するなど、コンプライアンスの徹底も図っている。「経営者が本気になればできるんだ」と、ライフテック(埼玉県川口市)の山中彰社長は話している。
トラック10台という零細規模で黒字化に成功しているライフテックは、昭和44年に山中社長がトラック1台でスタートしたのが始まりで、平成5年に法人化し、同11年に営業許可を取得した運送会社だ。
資金が潤沢にあるわけでもなければ、仕事に恵まれているわけでもない、中小・零細運送事業者の典型だといえる。そんな事業者がなぜ、コンプライアンスの徹底を図り、なお黒字化に成功したのか。そこには経営者の並々ならぬ覚悟があった。
6、7年前の同社は、厳しい経営環境の中で、社会保険にも加入できずにいた。「環境規制での代替え負担なども加わり、必要性を感じながらもできないとあきらめていた」と同社長は振り返る。当時は社会保険に加入していなくとも、利益の出ない悪循環に見舞われていたからだ。
そんな中、「社会保険にも入っていないような会社には、いい人材が来ない」との厳しい言葉を、息子である山中貴明専務から浴びせられた。その言葉が同社長に衝撃を与え、同時に火をつけた。
3年前、同社は背水の陣の覚悟で経営改善に取り組んだ。
まず、全従業員の社会保険加入に取り組んだが、社会保険に加入すれば、年間300万円のコスト負担増となる。ただでさえ利益の出ない中でどう捻出するのか、厳しい選択を迫られた。その結果、役員報酬のカットを断行した。当時、社長や専務だけでなく、奥さんにも給料を支給していたが、そうした役員報酬を見直し、そこから月30万円の資金を捻出する。
その一方で、全車両にドライブレコーダーにバックアイカメラ、さらにカーナビを装着する。「カーナビを付けることによって、ドライバーに余裕が生まれた」と話す同社長。それが配送先での態度や運転に反映された。「荷主にきちんとあいさつするなど、仕事が丁寧になった。また、余裕のある運転で事故がなくなった」という。
荷主との信頼関係の構築、無事故によるコスト削減、さらに省燃費運転にも取り組み、燃費を20%以上改善させた。また、Gマークを取得、今年度更新の申請もすでに済ませた。
こうした取り組みがすべてプラスに働き、みるみるうちに会社は利益体質に変わった。「少ないながらも、夏季と冬季に賞与を出せるようになった」と同社長はいう。 「我々のような零細規模の事業者でも、経営者が本気になれば、コンプライアンスの徹底を図った上で、しっかりと黒字の出せる会社にできる」と話す同社長の言葉には、わずかトラック10台で、実際に利益の出せる会社を実現しているだけに、説得力がある。
「小さくてもきらりと光る、そんな会社にしていきたい」。同社の今後が楽しみだ。 -
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