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ブログ・高橋 聡
第209回:令和時代の運送業経営 労務トラブル実例編(5)
2021年11月11日
【労務トラブル実事例編】⑤
「コロナ禍で頑張る運送業経営者を応援します!」というシリーズで新型コロナウイルス影響の下で「令和」時代の運送業経営者が進むべき方向性、知っておくべき人事労務関連の知識・情報をお伝えしています。
今回も前回に続き、運送会社で実際に発生した「労務トラブル実事例」とその対応策について説明してまいります。
1.労務トラブル実事例
⑴トラブル内容
神奈川県の運送会社A社に半年間勤務していたドライバーBさん。入社当初から「挨拶」「車内清掃」「洗車指示」などの業務指示を守らず、度々お客様からもクレームの多い人物であった。同僚ドライバーとの揉め事も多く、配車係への暴言など問題の多いドライバーでA社社長は「ドライバー不足であったので簡単な面接で採用したが、あんな奴は採用しなければよかった」と感じていた。A社では事故を起こした場合、「事故弁済金制度(損害額の3割を本人に求償)」を実施していたが、ある日Bドライバーが単独事故を起こし、本人に求償をしたところ、「それならば辞めますよ」と言ったきり出社しなくなってしまった。最後の給与から求償分を引き去る旨を伝えると、「それならば労基署に行く」「未払残業を請求する」と高圧的に言うため、対応に苦慮。地域の社長仲間によると、さまざまな会社で問題を起こしているドライバーらしく、採用したことを後悔している。
出社してこないので弁済金の精算も出来ないまま、最終の給与の支払いをせざるを得ない状況に。
⑵事例のポイント
本事例では、半年間勤務した問題の多いBドライバーに対する対応方法がテーマです。同社では「荷主向けサービス向上」を理念とし、「挨拶・マナー」「車両・車内清掃」などに注力し、ほぼ全てのドライバーがルールを守っていた。しかしながら、Bドライバーは「俺は俺のペースで洗車をやる」「挨拶はお客さんが先にしてくるのが当たり前」などと言い、指示を守らない事が多かった。社内のベテランドライバーが指導し、改善を促しても聞き入れてもらえず、徐々に同僚も距離を取るようになっていったとの事です。
A社の給与制度は「日給制」であり「未払残業リスク」があり、給与制度を見直し中でA社社長としては事を荒立てたくはないのが本音です。
2.対応策
問題社員への対応はどこの会社でも苦労していますが、未払残業リスクがあると、いざという時に強気な交渉ができない事となります。会社としても事を荒立てたくないのが本音でしょう。
そのため、経営への影響度が多い「未払残業リスクの排除」。つまり給与制度見直しを急ぐ事が急務です。また、暴言をはく・クレームを受けた場合、その都度「勤務改善指導書」を交付し、指導記録を残す事やSNS調査などで応募者の素性を可能な限り調べる事も必要と考えます。
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筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
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