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ブログ・小山 雅敬
第223回:荷主から車建運賃を個建運賃に変更する要請を受けた
2022年1月18日
【質問】コロナ禍の影響で売り上げが減少したある荷主から、「貨物量が減少しているので現在の車建運賃を個建運賃に変更してもらいたい」との要請が来ました。わが社の主要荷主であり、断ることもできず、どのように対応すれば良いか迷っています。
コロナ禍で打撃を受けた荷主が経費見直しの過程で「物流費」に着目し、「貨物量が減少して積載率が大幅に落ちているのに、運賃が変わらないのはおかしい」と考え、現行の車建運賃から個建運賃への変更を申し入れてきたものでしょう。
しかしながら、そもそも車建運賃で契約した当時、個建運賃の場合に比して安価な運賃に設定していたはずです。長期安定的な仕事なので、比較的低価な車建運賃で合意したものと思います。そのため、荷主の都合で運賃契約の変更を検討するのであれば、まず基本運賃自体の増額が前提となるでしょう。
増額後の基本運賃を基準とし、過去の積載実績を元に個建運賃の単価計算を行うことになります。その際、単価計算に平均積載率を用いるか、今後も減少見込みであればより低めの見込積載率を元にして適正な単価を計算しておく必要があるでしょう。
なお、最低積載率を下回った場合の固定運賃については現行の車建運賃から若干引き下げた水準とし、貴社が採算を維持できる程度の価格に設定することで良いでしょう。貴社の採算が保てる前提で、荷主が求める運賃の変動化を指向し、両者の採算が両立する接点を見出すべきです。
また、交渉にあたっては、現在の環境下における運送原価を再度計算して、近時の燃料費の異常な高騰など、前回の運賃決定時の状況とは大きく異なる実態を正確に原価に反映する必要があります。
さらに、人手不足の深刻化や最低賃金の大幅な上昇、年休の取得義務化、労働時間削減など、近年の厳しいコスト環境を説明し、その根拠を原価の数字で裏付ける必要があります。これを機に燃料サーチャージ制の導入についても、個建運賃に変更する場合、同時に検討すべき事項として提案すると良いでしょう。
今回、荷主側の事情から察すると運賃の引き下げを意図している可能性がありますが、相手が主要荷主であれば、貴社は先方の重要なパートナーでもあり、貴社の置かれた現状を正しく相手に伝えておく必要があります。
荷主の要望に応えて取引を継続する努力は大変重要なことですが、一方的な要請を繰り返す荷主に対しては将来的に取り引きの見直しを検討すべきであり、そのためにも普段から新規荷主開拓の努力を怠らないことが大事だと思います。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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