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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(364)リーダーシップについて(4)―2
2022年2月7日
この倒産型リーダーの特徴はどこにあったか。まず一つは、現実から目を背け、人のせいにして安易に人の助けにすがろうとする甘さである。〝溺れる者はワラをもつかむ〟ということわざ通り、追いつめられていた。B社長が破産をすすめた時、素直に決断していれば一家離散、夜逃げ、家庭崩壊は避けられていただろう。それが、見栄を張って夜逃げする直前までベンツに乗って虚勢を示していたのだから救われない。
第二には、社員を全く信用していなかったということである。20人いた社員を次々とクビにして、残った社員をおびえさせ、やる気を失わせて、ついに万策尽きたわけである。売り上げが減少するから資金繰りに追われ、しかも固定費の削減ということで、人件費をカットしていく。社員の協力を得るというより、社員を単なるロボットの如く考えていたわけである。
経営数値はドンブリで、ごまかしのうえに成り立っているので、経営公開はできない。経営情報を公開して、苦しい時は知恵を出し合い、給料の欠配、遅配にも耐えぬこうとする経営風土ではない。
第三には油断である。A社長は創業8年目につぶれた。創業以来順調に売り上げを伸ばしてきたので、逆境を知らなかった。創業から5年ぐらいは先頭に立って働き、社員の二倍も三倍も働いてきた。それが6年目ぐらいから気が緩み、「社長、社長」といわれてその気になって女遊びも激しくなり、ついには夫婦仲も破局に直面していた。
はじめは、妻も協力して「お父さん、頑張ってね」と励ましていたがA社長の女遊びの激しさで冷え切っていた。これは家庭の崩壊と企業の崩壊は連動するといういい見本である。
A社長は甘さと、信頼感のなさと、油断でつぶれていった。この倒産型リーダーの例は、じっくりとかみしめねばならない。したがって自己には厳しく、部下を信頼し、心を引き締めておけば、まずはつぶれない。正に「安けれども危うきを忘れず、存すれども亡びを忘れず、治まれども乱るるを忘れず」でなければならない。 (つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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