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ブログ・小山 雅敬
第149回:社員の給与に「業績給」を組み込みたい
2019年2月5日
【質問】わが社の賃金体系は固定給であり、頑張っている社員と、そうでない社員との間に差がありません。同じ仕事をしても、時間がかかる人ほど高い賃金になるため、効率良く働く社員から不満の声が出ています。現在、業績給の導入を検討していますが、どのように設定すればよいのか分からず、困っています。最近の業績給の傾向と合理的な組み込み方を教えてください。
現在、固定給で運用している会社から、「業績給を検討したい」という相談が増えています。賃金改定の相談に来られる経営者からは「会社が働き方改革に対応して時間短縮と労働生産性の向上を図りたくても、時間短縮=賃金減額になるため、社員が業務の合理化に無関心だ」「配車係に協力して良く仕事をしてくれる社員ほど、努力した成果が賃金に反映されない現状に不満を持ち、早く辞めていく。残るのは、のんびり仕事をしたい社員ばかりだ」という声が聞かれます。
最近、ある運送会社が全社員約70人にアンケートをとったところ、会社への不満として「頑張っているのに給料に反映されていない」という声が多く出ました。「賃金を上げてほしい」という声よりも多かったのです。この会社は現在、業績給の導入に向けて準備中です。
業績給は会社の実態に合わせて作る必要があり、作り方は多種多様になります。従来は個人の月間運賃収入や月間走行距離を使って業績を計算する会社が大半でしたが、現在は、そのデメリットが現れ始めたため、業績の基準として、あまり使わなくなってきました。特に売り上げ基準は賃金の変動費化という側面では経営メリットがあるものの、最近の運賃交渉の結果、運賃の上昇が続き、また荷主による運賃格差が広がりつつあるため、運用上のデメリットが出ています。走行距離基準は遠回りするほど給料が高くなるデメリットがあります。これらは従来、計算のしやすさからよく使われていた数値ですが、最近の傾向としては、仕事の内容を、より重視した指標を採用するようになってきました。
例えば、運行ルート別の設定、配送先の件数、配送個数(ケース数)、手積み・手下ろしの件数、デジタルタコグラフの安全運転評価点、ドライブレコーダーの危険映像の有無、事故の有無、改善基準告示の順守度、燃費の向上度合などです。車両別の粗利益をもとに計算している会社もありますが、売り上げの数値を使う場合は、実運賃ではなく、社内標準運賃を設定し、どの荷主の仕事をしても同様の仕事であれば、同じ運賃収入として計算する仕組みが必要になります。また、通常の業務内容に加えて追加業務をこなしてくれた社員には、それを評価する仕組みを組み込みます。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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