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ブログ・馬場 栄
第145回:今年実施される法改正(1)
2019年3月29日
新年明けましておめでとうございます。昨年は読者の方々から多数のお問い合わせや貴重なご意見を頂き、誠にありがとうございました。さて、年も明けて平成31年になりました。今年は約70年ぶりの労働法制の大改正が行われる年であります。運送業にも大きな影響を与える法改正でありますので、年明け1回目は労働法改正について概要をお話していきます。
今回、ひとくくりに労働法制の大改正と言っても、いくつかの内容に分かれており、また法律の開始時期も分かれております。改正内容の大枠については図に記載のようにいくつかありますが、今回は特に重要な①年次有給休暇年5日義務化②時間外労働の上限規制③同一労働同一賃金についてお話していきます。
まず、①年次有給休暇年5日義務化ですが、現状でも有給休暇は社員の権利として最大20日(年間)発生しています。それは忙しいドライバーであっても例外ではありません。現状の有給休暇ルールは、有休の権利を持っていても行使せずに結果取得が0日であっても問題はありません。しかし、直近のデータでは有給休暇の取得率は49%に留まり取得が低い水準であったため、平成31年4月の法改正により発生した年次有給休暇のうち、5日間は必ず取得する義務が発生しました。また、取得させる義務は会社にあり、守れないと会社が罰則をうけることになります。
法改正により、これまで有給休暇を取得してこなかった社員に、どのように有給休暇を取得してもらえば良いのでしょうか。取得が進んでおり、すでに5日近く消化できている会社だと特に気にしなくてもいいのでしょうが、今まで有休を取得した社員が少ない会社ですと、原則の対応どおり社員の好きな時に取得してもらう方法では、配送が滞り業務に支障が出てしまいます。運送業で好きな時期に取得というのは難しいかもしれません。とはいえ、法改正に対応するために年次有給休暇を取得しなくてはなりません。そこで会社の業務になるべく影響がでない取得方法として、次の2つの方法が考えられます。
一つは、有休の取得について社員から取得の希望時期を聞き、それを踏まえて会社が取得日を指定する方法です。業務の繁閑や、配送ルートごとの実施有無により、業務に影響がない範囲で社員ごとに有休取得の日を指定します。5日取得してもらうために会社は取得日を指定できますので、社員側から取得日の希望があった際でも、それを受け入れるかどうかは会社判断で決められます。なるべく業務に影響がない範囲で有休を個人ごとに設定する方法です。
もう一つは、計画年休制度を活用する方法です。計画年休制度とは、社員の有給休暇についてあらかじめ取得日を会社が指定して決めてしまう制度です。例えば、お盆3日と年末年始2日は有給休暇にあてるといったことができますので、あらかじめ会社の決めたタイミングで有給休暇を5日取得することができ、業務への影響が一番少ない方法であります。ただし、制度の利用には「社員代表との労使協定の締結」「就業規則へのルール記載」が必要であり、また、休日の日数も比較的多めの会社でないと実施できないなど条件があります。
いずれの方法を利用するかは会社の実態を見て検討する必要がありますが、いずれにせよ年次有給休暇の5日取得義務化は来年4月から開始されますので、すぐに対応を検討する必要があります。また、今後は年次有給休暇管理簿を作成し、年次有給休暇を取得した日、日数、基準日などを労働者ごとに明らかにして3年間保管しておく必要もあります。その他の重要法改正内容である②時間外労働の上限規制③同一労働同一賃金については、次回お話をしていきます。
(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄)
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筆者紹介
馬場 栄
保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士
年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。 -
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