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物流ニュース
人が集まる事業モデル「ウーバーイーツ」 バイク便業界の見方
2019年6月3日
生産年齢人口の減少やライフスタイルの変化に伴い、国は多様な働き方を選択できる社会の実現に取り組んでいる。様々な業界で人手が不足している中、空き時間を有効活用した新しい副業として注目され、多くの働き手を集めているデリバリーサービスのUber Eats(ウーバーイーツ)。自転車や原動機付き自転車でできる仕事との位置づけで、配送サービス事業でみればバイク便に近い。バイク便業界では、ウーバーイーツのような事業を、どのようにみているのだろうか。
はじめに、ウーバーイーツのビジネスモデルで、注目すべき部分「働き手の確保」について、運送事業法など問題点はないのか専門家に聞いてみた。
運送業書類の提出代行などを行っている鈴木事務所(神奈川県横浜市)の鈴木隆広所長は「ウーバーイーツでは自転車と125㏄以下の原動機付き自転車なので、運送事業法などで規制の対象にはならない」と話す。そのうえで、「労災など、個人事業主であろうと今後、米国などと同じように、労働者として保護されるべきかどうかといったことが問題になってくるのではないか」と考えている。
また、運送関係の許認可全般を行っている稲井国際行政書士事務所(東京都台東区)の稲井威夫所長は「運送事業法では問題ないので、誰でも気軽にウーバーイーツの仕事をすることができる」とした。ただ、「委託して運んでもらう場合、信書が含まれていると問題になるが、領収書や納品書などは全て電子決済で済んでいるので、特定信書便事業にも該当していない」としている。
ウーバーイーツについて、バイク便協同組合(同中央区)の渡辺富敏理事長(グレートパックエクスプレス社長、同江東区)は、「基本的に、我々の事業とは住み分けが出来ている」とし、「ウーバーイーツで働いている人と違って、バイク便をやりたい人の多くが、バイク好きで生活の糧としてメインの仕事とする人が多い」と話す。
「バイク便の市場は最盛期に比べて、3分の1くらいの規模になってはいるものの、ドライバーの確保は重要」とし、「関東と関西の組合が一緒になって、組合員同士が協力し合って効率化を進め、業界に人が集まる仕事を確保していかなければ」と考えている。
また、志賀寿光副理事長(志賀プロジェクト社長、同世田谷区)は「ただ単に運ぶという業務から、付帯サービスを行うようになっているので仕事が複雑化してきた」とし、「単純作業だけでは単価が上がらないので人が集まらない」という。「人の確保という部分で、見習うべきところはある」とし、「人にあわせて、ライフスタイルにあわせて仕事を提供する。そういう部分は見習うべき部分だと考えている」としている。
このほか、バイク便事業者のタイムボックス(同中央区)の小仁井秀雄社長、フリーラン(同)の平原一義社長、日本急送(同)の小仁井高秀社長にも話を聞いた。
タイムボックスの小仁井社長「ウーバーイーツは外資なので、それこそ黒船がやってきた感じ。特に働き手の獲得法は、これまでとは違う取り組みなので、我々ももっと自由な働き方を考えていかなければならない」
平原社長「でも、事故が起きたときにどのように対応するのか関心がある。今後、細かい部分でいろいろな問題が出てくるかもしれない」
日本急送の小仁井社長「国がやっている働き改革にあわせて、働き方を提案しているというイメージはある。そういう部分についてはうまいなと思う」
タイムボックスの小仁井社長「ウーバーイーツの仕事をやりながら、こちらの業界はどうだろうと面接に来る人がけっこう増えている。そういう意味では、業界にとって刺激になっている」
平原社長「だからといって、ウーバーイーツのような業態にしていこうとは思わない。品質を重視することで差別化を図っていきたい」
日本急送の小仁井社長「弊社では、全国の同業約20社と業務提携という形で取引しており、全国の事業者とネットワークを結ぶことで、人材の共有化、荷物の情報共有を行っていく。中小事業者がまとまることで、ECなどの荷主にとってバイク便が配送の新たな選択肢になることを期待している」
また、3人はともに「ライバルは同業者ではなくなっている」と認識しており、ネットワークを生かして大きく合理化することで、単価を上げていける構造にすることで、働き手を獲得していかなければならないと考えている。
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