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ブログ・小山 雅敬
第167回:人が集まる運送会社の事例
2019年10月15日
【質問】わが社は、この1〜2年、募集広告を出しても人が集まらず、人材確保に大変苦労しています。中小運送会社で人が集まる会社には、どのような特徴があるのか事例を教えてください。
日本中の運送会社が人材確保に苦労している中、全く苦労を感じていない会社も存在します。先日訪問したA社の経営者は私に向かって「本当に今、人手不足なのですか? 人余りになったのかと思っていました。うちは最近も6人入ってきました。若い人ばかりです。今まで人手不足と感じたことはありません」と言われました。
A社は地方の中核都市に所在する中規模運送会社です。近隣には私が人材確保対策の相談を受けて指導した運送会社が複数あり、決して人余りなどという地域ではありません。私は驚いて「そんなことを言える会社は非常に珍しいですよ」と答えました。
A社はハローワークに求人票を出していますが、特段、求人対策に注力している様子はありません。なぜ、若い人を中心にA社に集まってくるのか、その理由を経営者と話し合ってみました。A社が自覚しているのは近隣他社より賃金が高いことでした。入社する社員に聞くと、多くが賃金を理由に挙げているようです。
A社の賃金が高い理由は、その営業力にあります。A社は10年以上前に大企業依存型から地元企業との取引拡大に大きくシフトし、中堅中小の荷主との取引を増やしました。大企業との取引から撤退し、荷主の分散化に努めました。それが功を奏し、現在は運賃交渉力を持つ安定高収益体質の会社になっています。
A社の賃金体系は売り上げ歩合が中心で、無事故やデジタコボタン押し、配車協力度など業務貢献度を反映する手当を追加支給するシンプルなものです。仕事の貢献度を直接反映しており、頑張る人が報われる体系です。また休日を確実にとれることも人が集まる理由と思われます。
A社は毎日曜日と隔週の指定休日1日を与えています。経営者は繁忙期でも休日には必ず休ませていると話してくれました。また、口コミで集まってくる人が多いようです。私はここがポイントではないかと思いました。口コミは大変強い影響力を持っており、重要な求人手段です。社員が働きやすい会社だと思い、友人などに勧めているのでしょう。
経営者との話の中に社員を思う言葉が頻繁に出てきます。私は「社員のために」と繰り返す経営者の言葉の中にこそ、この会社に人がたくさん集まる理由を見たような気がしました。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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