-
ブログ・高橋 聡
第160回:給与体系変更の留意点(8)求人対策(2)
2019年10月29日
前回に引き続き、給与を変更する際に検討すべき事項や留意点、必要な手続き及び実務上の注意点について紹介していきます。給与体系を変更する場合に検討すべき事項には、表に記載したおおむね5つの観点【図①】が必要となります。今回も「求人対策②」について解説します。
ハローワークの求人票で、求職者が着目するポイントとして、「仕事の内容」に次ぐものとして「就業時間・休日」が挙げられます。「働き方改革」というキーワードが報道される中、比較的若手層のドライバーやドライバーの奥様や親御さんが重視しています。最近は面接に来たドライバーが開口一番、「年間休日は実際何日ですか?」「有給休暇は希望通り取れますか?」という質問をしてきます。求人票で記載している内容と実態が異なることはトラブル発生の原因にもなるため注意が必要です。
休日数は1日8時間の所定労働時間の場合は105日、1日7時間30分の所定労働時間の場合は87日が理論値なので、その前後の日数で設定します。従来は1日の所定労働時間数を短くし休日数を少なくする手法もありましたが、現在の求人状況の中では不利になるでしょう。また、求人票上の休日数及び就業規則上の休日数を前提として、運行の都合により休日に労働した場合は「時間外労働割り増し」「休日割り増し」で精算していくこととなります。このことは応募者との面談の場で、しっかりと説明していく必要があります。
有給休暇5日の取得義務化が4月からスタートしていますが、実施状況はいかがでしょうか。弊社のお客様の中には「連続5日の有給休暇取得」を義務付けている会社が出てまいりました。5日の連続取得で前後の土日を休んだ場合は9連休が可能となる内容です。このような他社に先駆けた方法も求人対策を意識してのもので、訴求力も大きいと考えられます。
さて、次に着目されるのが「賃金」になります。ハローワークの求人票の場合、「給与a」に基本給、「給与b」に定期的に支払われる手当を記載することとされています。求職者の視点で考えると、「給与a+給与b」を高い金額で表記できることは応募を集める際のポイントとなります。この場合、定期的に支払われる手当に固定残業代の表記が可能です。
通常、残業代は変動給なので「給与b」に記載することは出来ません。しかし一定の時間数の残業代を固定的に定額で支給する固定残業代は、「給与b」に表記可能です。残業代単価の兼ね合いより基本給を低くしている会社であっても固定残業代の導入は求人対策を考えると大変有効です。「給与a」+「給与b」で17万円程度の水準が必要です。固定残業代以外の手当に関しても、定期的に支払われる手当に該当するものがないか(例えば最低保障歩合給なども「給与b」への記載が認められるケースもあります)、手当の趣旨、目的を明確にしてハローワークの窓口にご相談ください。
なお、「給与a+給与b」が低い水準となる場合、自社ホームページでの広告型求人をする場合は、ハローワーク以外の媒体や民間チャネルでの求人を検討しくこととなります。
-
-
-
-
筆者紹介
高橋 聡
保険サービスシステム社会保険労務士法人
社会保険労務士 中小企業診断士
1500社以上の運送会社からの経営相談・社員研修を実施。
トラック協会、運輸事業協同組合等講演多数。 -
「ブログ・高橋 聡」の 月別記事一覧
-
「ブログ・高橋 聡」の新着記事
-
物流メルマガ