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ブログ・小山 雅敬
第171回:賃金の加点評価で社員のモチベーションを上げる
2019年12月10日
【質問】現在、賃金体系の見直しを検討しており、社員のモチベーションを上げる賃金の仕組みを模索しています。運送業における成功事例があれば教えてください。
運送業には配送業務に特化した実運送会社や、物流センターで商品管理まで行う物流会社、システム部門を有する3PL事業者など多種多様の業態があり、それぞれの業態ごとに適する人事・賃金制度が異なります。中小企業で最も多い実運送会社の場合でも、運ぶ貨物の種類や運行エリア(近距離or長距離)、荷役作業などの業務内容によって適する賃金制度が異なり、各社の事情に応じて最適な制度を考える必要があります。固定給で構成する賃金体系が適する会社もあれば、歩合給を組み合わせた方が効果的な会社もあります。どの体系であっても共通して言えるのは、減点方式の賃金体系よりも加点方式の賃金体系のほうが社員のモチベーションを上げる効果があるということです。
例えば、無事故手当です。無事故手当は運送会社で最も多くみられる手当ですが、その効果は「事故を起こすと減額になる」という懲罰的効果です。これに対して無事故を継続すれば賃金が上がる仕組み(例えば歩合率を無事故1年経過ごとに一定率上げていく仕組みなど)は恩典的効果があり、無事故の継続に対するモチベーションが生まれます。
ある運送会社が整理整頓の徹底を図るため、きちんと整理整頓ができた人を加点評価で手当を増額支給する仕組みを導入したところ、社内全員が真剣に取り組み、以前とは見違えるほどきれいな会社になった例があります。
社員は自分の行動が目に見えて処遇に現れることで、会社の期待に応えて行動する意欲を高めます。特に中小運送会社の場合は、大企業の労務管理を真似て精緻な評価制度を組み立てても、ほとんど機能しません。「賞与に反映させれば期待した通りに行動してくれるだろう」と考えると間違えてしまいます。会社の評価が昇進・昇格に結びつく大企業とは異なるのです。
中小企業の現場で働くドライバーには、加点評価を月々の給与に反映し、正当に報いていくことが重要です。どうすれば月々の賃金が上がるのかを示すことが大事です。
社員のモチベーションは加点評価でのみ上がります。賃金の減額では行動は変わりません。従来、懲罰的減額方式の引き算型賃金を採用していた会社は、「出来たら上がる」という足し算型賃金へ変更することをお勧めします。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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