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ブログ・馬場 栄
第136回:給与設計前に行いたい財務分析
2018年7月5日
ドライバー不足が続いている状況で、ドライバーの給与体系変更を検討する会社が増えています。今回は、いざ給与体系を変更する場合の考え方と、どのような手順で変更を進めていけばいいのかについてお話していきます。
給与の改定に当たり、人件費をどのくらい見ればいいのか分からなくて、なかなか決められない社長も多いのではないでしょうか。まず、給与制度の変更を検討する際に、財務分析を行い、会社の状況を確認しておくことで、給与制度変更のヒントを見つけることができます。また、分析により自社の「強み・弱み」を発見することもできます。
財務分析のなかで最も重要なのは、運送原価の分析になります。運送原価には、人件費(ドライバー)、燃料費、修繕費、高速費、減価償却費、保険料などがあります。
売上高に対する人件費率ですが、一般的に地場主体の車両(4トン、月間走行5000キロ前後)の人件費率は45%以下、長距離主体の車両(大型、月間走行約1万キロ前後)の人件費率は40%以下が、おおよその目安になります。計算上、売上高は傭車収入を除いて自社売り上げのみを100として算出し、人件費には社会保険料や福利厚生費などを含めます。
燃料費は原油価格の動向により上下動がありますが、おおむね地場主体の車両の場合12%以下、長距離主体の場合は25%以下がおおよその標準値になります。修繕費は地場でも長距離でも8%以下に管理していく必要があります。他にも高速費や減価償却費、自動車保険料などの比率も気にしていく必要があります。
各指標について部門別、事業所別、社員別に確認することで、会社が抱えている課題が見えてきます。どの事業所に、どのような問題があるのか明確にするのです。また、率を対前年比で見ることで、改善しているのか悪化しているのかの判断をすることが可能になります。
さて、給与設定の話に戻しますと、人件費率が高い場合には給与が適正水準でない可能性があります。もちろん、人件費率が高いからといって簡単に給与額を変更できるわけではありませんが、給与制度の変更を進めていくにあたっての留意事項として認識しておく必要があります。
また、標準値より高い率となっている場合や、前年より悪化している指標があれば、給与制度のなかで、その対策を検討していく必要があります。
(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄) -
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筆者紹介
馬場 栄
保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士
年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。 -
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