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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(288)人材育成について(7)事例(1)
2020年5月11日
・適材適所
適材適所とは、才能や力にあった役目や仕事を与えることで、そのためには一人ひとりの特長を生かすことが大切である。企業で働く人全員が、社長というわけにはいかない。それぞれに役目、持分がある。それぞれのポジションで、やる気に満ちている社員を育成していかねばならない。そのためには、何が必要か。義理人情、ナニワ節と称されるものも、必要とされるものの一つである。
従業員数200人ほどの食品工場で、組織活性度の調査で一人ひとりと面談した。Aさんは勤続35年、役職はない。大きな声の人である。これは製造工場なので、自然に機械の音に抗しているうちに、1対1の応接室でも、ついボリュームが大きくなっているわけだ。「35年も勤められてこられたのは、すごいですね。辞めたいと思ったりしたことはなかったのですか」。Aさん「辞めようと思ったことは何回もあるよ。でも、たいした能があるわけじゃなく、気が付いてみたら35年よ。長く勤めているからといって自慢にもならないよ」
「役職がついてないですが、どうしてですか」。Aさん「それは会社に聞いて下さいよ。どうしてなのか自分でもわからない。そうだな。やっぱり人の上に立って、あれこれするタイプではなかったわけだよ。役についてないので給料も低いし、一人娘を大学に入れて苦労したよ」
中小企業では、経営学の教科書に書いてあるような幹部能力がなくても、一芸をもっていれば、何らかの役職についているのが普通だ。Aさんはまれなケースである。Aさんと話してみても、特に能力が低いとは感じなかった。なぜ、役職につけなかったのであろうか。ボタンの掛け違いみたいなものではなかろうか。Aさんは、上になりたくないという。会社はそうかというわけで、年数が経っていく。この関係は、役職ということでいえば、ボタンの掛け違いである。
しかし、AさんにはAさんの役目がある。工場長曰く「そりゃあAさんは平ですが、上のものと下のものとのパイプ役を務めてこられましたからね。黙々と働くという我社の社風は、Aさんのような人がいてつくられたものですよ。適材適所とまではいいませんが、人それぞれ持ち味があるんですよ」 (つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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