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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(304)人材育成について(12)A社の事例(2)
2020年9月14日
・仕事のローテーション
同じ仕事を同じ立場で長年続けていると、その仕事を通じていろいろと改善したり工夫したり、新しい喜びを発見する努力がなければ成長は停止するというより退化する。中小企業では、人材の質量の関係でローテーションができにくい。何の工夫もせずにそのままにしておくと退化してしまう。成長欲が失せて物忘れも多くなり大ポカが発生するなど、今までだと考えられないミスを起こしたりする。
製造現場に勤めるCさんは配転もなく一貫して同じ部署で働いていた。食品製造現場である。食品の品質保持の為の保管現場であるが、ちょっとしたミスで原料を腐らせてしまった。いままででは考えられないミスである。ボケが始まったとしか考えられない。ローテーションがなく1か所に無気力でとどまっているとCさんのようなことが起こる。人材を育成しようと思えば、刺激がなくてはならない。いろいろな工夫がいる。そのひとつが仕事のやり方や内容を変えてみる。いわばローテーションである。
・新規開拓精神の育成
新しい分野の仕事や新しい商品開拓とか、新規得意先開拓へのチャレンジは人材を育成する。保守的で新しい事象に好奇心がなく、じっと現状のパターンのみでは退化する。老舗企業の倒産、衰退パターンがそうである。創業50年、旧来のやり方にしがみついて新規得意先や新規商品の開拓をしない。企業そのものがマンネリにどっぷりつかって危機がじわじわしのびよってきても、なすすべをしらない。
A社は創業50年の染工場であった。主要得意先への売り上げが30%も大きく落ち込んで事業を閉鎖した。直接の原因は主要得意先への売り上げ激減であるが、根本的には新規開拓精神の気力喪失である。私はA社の小集団活動の活性化ということで1か年研修を担当した。研修をやめて5年くらい経って、A社の社員に街でばったり会って閉鎖を聞いたわけである。
私が研修していた時は、社業も好調であったが、仕事の性格が下請けで、受身タイプであった。A社の社員の言によると、老舗ということで現状に固守して新しい得意先や商品開拓への取り組みはなく、だんだんと会社に元気がなくなって、売り上げ減少になすすべもなく、やる気を失ってしまったとのこと。
企業だけでなく、人もそうである。チャレンジする心を育成していないと退化する。その為には常に新しさへの興味と関心をもって、具体的に行動へと結びつけていくことだ。 (つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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