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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(338)小集団活動のすすめ方(3)―3
2021年6月14日
社長はまず、毎朝朝礼を始めることにした。今までは、朝出勤することもまれであったが、心を入れかえようと実行した。そして、週1回小集団ミーティングを始めた。テーマはズバリ、「経営の活性化、赤字からの脱出」である。初めの1か月は問題点を洗いざらいぶちまけて、前記の大テーマを絞りこんでいった。
問題点としては、会社の風土としては、あきらめムード、夢がない、プライドがもてない状況である。
計数面では、どれくらい赤字なのかわからないという点である。
人材に関してはベテランばかりで、マンネリ傾向でその日暮らしで目標がない。
仕入れに関しては、店長の勘に頼っているので、デッドストックになりやすい面がある、新しい商品を取り入れていく感性が鈍い、メーカーのいいなりになっているなどである。
こうした問題点をふまえて、一人ひとりが取り組むべき項目を決めていった。社長は、中期経営計画、ビジョンを示すこと、社内ミーティングを重ねながら、3か月後に発表するとした。店長は、販売計画を月ごとに設定し、その達成方法について具体的に指示すること、在庫については、4か月以上のデッドストック一覧表を作成するとした。
経理部長は、月次損益表と資金繰り表を作成する。事務員は、経費予算表を作って実績と対比する。販売員は、顧客管理カードの充実、年間の催時計画、商品知識の研修、接客技術の向上、訪問活動の計画とその実施などである。
そして、こうした会社目標と個人目標を達成したら、成果配分のルールを作って実行するとした。働いている一人ひとりが、問題意識をもつ、この姿勢がやる気を高めていく。そのための前提として、心のつながり、社長と従業員の良好な信頼関係がなければならない。
ある大企業から関連会社へ出向した社員がいる。その社員は関連会社へ出向した感想を次のように述べた。「ホッとしました。何がホッとしたかというと、QC活動をしなくてよくなったからです。ここだけの話ですが、社長がデミング賞をとるということで、夜の10時、11時までデータづくりです。経費の節約は、QC活動をやめたら、一番効果的です」。このエピソードは何を物語るのか。それは、技術やテクニックよりも、心のつながりが小集団活動にとって大切なことを示している。
A社では、週1回のミーティングを続けていくなかで、組織風土の改革に取り組んだ。一人の従業員は、次のような感想を述べた。「うれしいですね。私のアイデアが取り入れられて実行されて成果がでると、本当に充実を感じます。プライドもありますね。うちの店はヨソのお店とは違うんだ、決して負けていないと思うと、お店で働くことに喜びがあります。社長の心もよくわかります。マンションを建てるといわれたとき、本当に世間知らずのボンボンが、と腹も立ちましたが、それも過去のことですね」
かくして、ミーティングを実行し、小集団活動をスタートして2年、A社はよみがえった。正にコミュニケーションの実践の絶大なる成果である。社長は、企業の使命は、永続にありと肝に命じている。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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