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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(342)小集団活動のすすめ方(5)―1
2021年7月12日
小集団活動のすすめ方としては、いろいろな方法がある。今回は従業員26人の印刷工場A社について取り上げる。A社は、繊維業界を得意先としてタオルケットの箱などを作っている紙器工場である。工場長53歳、従業員の平均年齢30歳である。A社の小集団活動のリーダーは工場長である。
テーマは「一人ひとりの能力向上」で個別に具体的に一人ひとりに能力向上テーマを設定している。設定の方法は、工場長とのマンツーマンによる話し合いで決めている。工場長の方針として、職人を作らず、どの印刷機械でも、工程でもこなせる多能工の集団を目指している。
「私がこの業界に入ったときは、職人の世界で大変でした。ずいぶんつらい想いをしました。先輩は仕事を教えるというよりは体で覚える方式です」と、工場長の経験談である。
この経験に基づいて、自分が責任者となった際、職人をつくらない工場づくりを行ったわけである。ねらいとしては、多能工であることによる仕事のおもしろさ、やりがいを起こし、あわせてチームワークをとる。26人の集団が一つになる。バラバラではなく、結びついて手を取り合っていく。こうした人づくりの方針に基づいて小集団活動は展開される。
ミーティングの方法は、毎朝15分、粘り強く実施している。この15分のミーティングは、工場長をリーダーとして職長クラスで、始業前に行う。一人ひとりの能力向上目標の進行状況をチェックし、本日の作業のやり方について確認する。
A社の工場の朝は早い。始業は午前8時30分であるが、工場長は7時30分に出社し、8時には26人全員が出社する。そして、仕事に取り掛かる前にゆっくりと朝のコーヒーを飲みながら、ミーティングする。したがって、工場長を囲む朝15分のミーティングは自然に無理なく行われる。
月一回は、全体会議午後1時から60分、この会議は、成功事例と失敗事例を取り上げて、小集団活動の活性化を促すねらいがある。工場長の言葉によると、アメとムチである。
「ムチというのはいわば人身御供です。進歩の遅い者とか、マンネリにはまっている者をやり玉にあげて、涙を流すくらいに、コテンパンに皆の前でやっつけます。もちろん、全体会議の前にやり玉にあげる人を呼んで、今回は君やと理由を説明し、根回ししときます。コテンパンにやるけどオレの気持ちをよく分かれよというわけです」とし、「アメは反対によく努力をしている者です。皆の前でほめてほめぬくのです。この者も事前に根回ししときます。今回は君やけどあんまり有頂天になるなよという具合です」という。
こうした朝の自然発生的なコーヒーミーティングと月一回の全体会議を持続することで、一人ひとりの能力向上、多能工づくりに取り組んでいる。 (つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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