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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(351)小集団活動のすすめ方(8)―1
2021年10月4日
空前の人不足時代が継続し、定着している。日曜日や祝日に働かねばならない業種、週休2日制を実行できない企業、いわゆる多くの中小企業にとって深刻である。A家具小売店の社長が人手不足について相談に来られた。聞けば、販売員がやめてしまい、補充がままならず、社長が代わりをせざるを得ず、1日12時間、店から動けず、ほとほとまいっているとのことである。「どうしたもんですかねえ」と思案するばかりである。
この店は、火曜日が定休で週休1日、朝9時から7時ぐらいの労働時間、月給18万、賞与は年間3か月で労働条件は良くない。やめた販売員は45歳の女性で、10年のベテランであった。普通に考えれば、よく10年も、勤まったなと感心させられる。同じ労働条件で求人して採用できても、すぐやめて3か月ともたないという。
退職原因はどこにあるか分析してみると、労働条件の劣悪さということになる。社長の経営に対する考え方を根本から問い直して、変えていかないとこのお店の人不足は解決しない。「労働条件が悪いといったって、そうするしかうちの店はやっていけないんだ。給料も低いというが、これしか出せないんだ」と、社長は開き直る。そこで私は、ある運輸業での人不足問題に対しての経営コンサルティングの経験について述べた。
このB運輸会社は過去1年間、採用した50人、退職者47人、まさに入ってはやめ、入ってはやめでザルで水をすくう状態であった。退職原因はどこにあるか。労働条件は悪い。1か月の残業は、80時間が当たり前である。やめたドライバーにいろいろと聞いた。「疲れ果てて仕事から帰ってきても、ご苦労さんの一言に暖かさがないんだ。職場は暗く、あいさつはだれもすすんでしないし、俺のやめた理由はお金だけじゃないよ」
そこでB運輸会社では、社長が腹を決めて、まず隔週2日制休日にふみきり、時間外労働60時間へと時間短縮に取り組んだ。人件費は上昇するが、会社を人不足倒産させないための決死の決断であった。
そして、組織風土の改善に着手している。現在、退職率のペースはダウンし、悪夢は去っている。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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