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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(354)リーダーシップについて(1)―1
2021年10月25日
リーダーシップとは、指導力である。目標にむかって企業の構成員をひっぱっていく力である。この力は如何にして獲得されるのか。今回は、社員数30人の運送業のA社長の例を通して考えてみたい。
A社長は、東北の出身で戦後まもなく大阪にでてきた。無一文に近い状態からの出発であった。15歳ぐらいから仕事を始めた。工場の行員であったが、給料が少なかったので、20歳頃、港湾労働者となった。「1日14〜15時間働きましたよ。重い荷物を肩に背負ってきつい仕事でした。仕事が終わると、グッタリして、酒をのむしか疲れをいやせませんでしたよ。働いては酒をのむのくりかえしでした。心の中では荷物を運びながら〝なにくそ、このままで終わるか〟とつぶやいていました」
そうこうするうちにある運送会社の親方が、A社長の働きぶりを見込んで、チャンスをもってきた。「ガラス工場で工員をさがしている。4〜5人集めてきて、請負いで、仕事をしてみないか」。A社長25歳の時である。
「よし、このままではいかん。人夫をあつめて、請負いをやってみよう」と決心し実行した。集めてきた人は、いろんな経歴をもった、よそでは使いにくい人ばかりであった。A社長は先頭になって働いた。働きぬくとはこのことで、風呂に入る時間がもったいないぐらいであった。「学歴も、何のバックもない私がもっているのは体です。骨身を惜しまないというのが、私の取り柄です」
つれてきた人もそんなA社長の姿を見てよく働いた。そのうちに「今度は、運送の仕事をやってくれないか」と頼まれ、一台、また一台と徐々に増えていった。A社長の働きぶりはすさまじかった。「3昼夜72時間、車を走りに走らせて寝たのは車の中で2時間ということもあったよ。それぐらいになると、交通信号を待っている間も思わずウトウトしたよ。命を削るとはこのことだね」
従業員のレベルはいろんなタイプ。よそでは使いにくい人ばかりであった。A社長は体でひっぱっていくしかなかった。例えば、そのうちの一人の創業期のメンバーは元極道である。イレズミが体に入っている。「親父、つかってくれ」ととびこんできた。A社長はその男の心をつかんでいる。家の購入の際には、力になってやり、家一軒プレゼントしている。
その男は次々と人を紹介し、いまではA社の中核のドライバーとなっている。また、ある人は、「今度結婚します」とA社長に報告しにいった。
「そうか、おめでとう。それで結婚の支度金はあるのか」
「いや、ありません。なんとかなりますよ」
A社長はその男に80万円の結婚祝金をおくった。 (つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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