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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(163)トップのコミュニケーション〈事例A〉
2017年7月20日
〈カリスマ的支配〉
リーダーの役割は、メンバー一人ひとりの能力を引き出し、やる気にさせていくところにある。教育とはエデュケートということで、「引き出す」という意味がある。一人ひとりの可能性を引き出し、やる気にさせて自信を持たせていくことである。A社(社員数100人)は、成長している物流会社である。リーダーであるトップの力量がすごい。トップは中学卒で50歳。創業するまでは職を転々とし、一時はヤクザ渡世に身を染めたこともあるという。30歳で現在の事業を興した。奥さんとの二人三脚での出発である。トップの回りには5人の幹部がいる。5人の幹部全員、大卒ではない。独身者が3人いる。いずれも、トップとともに歩んできたメンバーである。
A君(40歳)は入社15年、独身である。実によく働く。会社の事業体制は、1年365日、24時間対応という物流サービス内容である。A君は午前1時出勤して、午後8時退社が、通常ベースである。「よく続きますね」と言うと、ニッコリしている。会社の中が人生そのままの生活の場となっている。
B君(42歳)も独身で、A君とペアを組んで仕事をしている。日曜日も交代して出勤している。年間稼働日数は330日、1日の平均労働時間は15時間、年間で約5000時間というペースである。あとのC君D君、E君は営業所のリーダーとして仕事をしている。普通の人の2倍は軽く働いている。年間で4000時間である。
事務関係(給与計算、経理、売上管理など)は奥さん1人が担当している。間接人件費は奥さんとパートの女子1人。従って、奥さんもよく働く。1年365日、24時間体制である。こうしたハードワークに耐え抜くメンバーを、どうしてリーダーであるトップは育成、獲得できたのであろうか。どこにノウハウがあるのか。それは、次の点である。
◎カリスマ性
カリスマとは、「奇跡をほどこし、予言を行う神賦の資質。カリスマ的資質をもつものと、それに帰依するものとの結合をマックス・ウェーバーはカリスマ的支配と呼び、支配類型の1つとした」(「広辞苑」)とある。
トップにはカリスマ性があり、5人の幹部はそれに帰依している。一種の教祖と信者の関係である。最近はそれほどでもなくなったが、鉄拳制裁、ビシッと殴ることもあると言う。かつてのヤクザ渡世の名残りというか、怖い面があるのである。今でもその筋の大物とは、友人として親交があると言う。いろんなトラブルでも、即解決してくれそうな雰囲気があるのである。
かつて、ある幹部がいたが、突然姿を消した。辞めさせてほしいと言えば、トップが怖いので、黙って姿を消したのであろう、と推察されている。
カリスマ的支配の特徴である。付いていけなくなったら、消えるしかないのである。労働基準法のワクとは関係のない、トップとの信頼関係とかカリスマ的支配とかの世界である。
(つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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