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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(193)二代目の決断〈事例A〉
2018年5月7日
〈開拓への挑戦〉
中小運送業の直面している経営危機は根が深い。ここ3〜4年、昇給ストップどころか、賃金カットを余儀なくされた会社もめずらしくない。賃金カットをしないとやっていけないのである。
A社のケースにもある通り、ニッチもサッチもいかない泥沼にはまり込んでいる会社も多くみられる。共通して言えるのは、先行きの展望が見えないことである。暗いのである。
「荷主のいじめがきつい。登校拒否に陥る子どもの心理がよく分かるよ」
中小運送業の生き残る道は、社長の決断にある。現実から逃げることなく、立ち向かうことである。A社長は全面撤退という方針を出して必死になった。この〝必死さ〟が生き残るキーワードである。
「荷主のいじめに愚痴をこぼしてみたり、嘆いていてもどうにもなりません。荷主に向かって仕事を断りに行った時の、胸が締め付けられるような緊張感、その無念さ、〝ナニクソ〟という思いが突破口になりました。新規荷主開拓の執念につながりましたよ」︱︱A社長は荷主開拓に全力を傾けた。ターゲットを自家配送している食品分野のメーカーに絞って、一定のエリアの積み合わせ業務=共同配送システムを構築していった。
今まで慣れ親しんできた運賃体系、チャーター料金をかなぐり捨てて、出来高運賃(1ケース単位)に改めていった。中小食品メーカーの1社、1社に足を運んだ。荷姿の検討、車種の選定、運行コース、時間指定︱︱などの課題を整理し、一つずつ乗り越えていった。一時保管できる配送センターとして自社の倉庫機能を改革した。保管方法、在庫管理、ピッキングシステムなどについても、共同配送に適合させてきた。徐々に成果が出てくる。
全面撤退してから1年後のことである。共同配送の仕組みとならんで、中小の食品メーカーの物流業務の全面受託をすることもできた。中小の食品メーカーの物流業務とは、保管、ピッキング、流通加工、配送のことである。物流センターの運営を任されたわけである。こうした必死の荷主開拓行動によって、売り上げ減少分を埋め合わせ、収益性を強化し向上させてきた。まさに中小運送業の生き残る道を示している。
(つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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