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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(270)人材育成について―A社の事例(1)
2019年12月2日
企業にとって人材育成は必須の経営課題である。私は経営のコンサルタントとして多くの中小企業の経営実態に直面している。その経験で、つくづく思い知るのは人材育成の大切さである。
中小企業は、なかなか人が育っていない。なるほど実務者はいるが、社長の片ウデとなると不充分である。「うちの会社は、私がすべてで、あとは手足ですわ。幹部といっても名ばかりですわ」とは、よく聞かされる。いわばワンマン型が中小企業では普通である。A社についてケースとしてとりあげる。
・A社の人材育成
A社は年商10億円の運送会社である。経営診断の依頼である。幹部のヒヤリングを実施した。会社は創業してから30年と老舗である。
「あなたの会社の社風はどうですか」。それに対する答えは次の如くである。
「暗いということである。社長がワンマンで、みんな社長の顔色をみて仕事をしています。社長がいつもみているので、冗談の一つも言えずシーンとした暗さがあるのです。物品の節約でも、うちは徹底していて、書類に穴をあけるパンチ一つでも、すでにパチッと押してなかなか上にあがらないくらいになっても、じっと使っています。社長の命令ですわ。それに社長はネチネチと人前で叱るのです。叱られる人は可哀相ですよ。みんな聞き耳を立てています。会議をしても、みんな積極的に発言しません。しても建て前です」
ヒヤリングしている私も心が暗くなる。中小企業で働く一人ひとりは、心の底に諦めがあると思う。いまさら大企業に入って高い給与をもらえるわけでもなく、自己の能力からすれば、こんなもんだ、との一種の開き直りにも似た諦めである。
だからA社のように暗いと感じても辞めない。辞めてもいくところがないと思い込んでいるからだ。前向きの成長欲が去勢されたようになっている人をよく見かける。
「うちの会社はよくできるのは、やめていきます。残っているのは、少しぬけたところのある者ばかりです。よくできるのは先が見えるので、さっさと転身していくのです。だから入って2〜3年の若手と15年以上のベテランという構成で、中堅がいないのです」
A社の幹部の言である。私はA社の社長に会って質問した。 (つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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