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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(273)人材育成について(2) A社の事例(1)
2020年1月6日
・人間成長の可能性は一人ひとりがもっている
従業員30名、業種は飲食業(そば、うどん店、お好み焼き)での小集団活動の経営指導で感じたことについて述べる。
小集団の研修で、いつも一番前の席に座っているAさん(48歳、女性)のことである。社内で密かにAさんのことをヘレンケラーと悪口を言う者がいた。耳が聞こえにくく、視力も悪く、しかも話し方もたどたどしい。なぜ、そのような障害をもっているのか、はじめは私は知らなかった。
Aさんは、そば、うどん店のホール係である。私は内心Aさんの能力は低いと思って、とても小集団活動ができる人とは感じなかった。したがって、いつも一番前の席に座るのも、耳が聞こえにくいからだろうぐらいにしか思っていなかった。
後でわかったことであるが、それはとんでもない誤解で、私の一言、一言を聞きもらさないようにとの必死の努力だった。Aさんは小集団活動の中で、メンバー5人のリーダーとなった。リーダーといっても、名前ばかりのものだろうと私は軽く考えていた。
私のAさんの能力に対する軽視の間違いを悟る時がきた。小集団活動の発表会である。Aさんは自分のグループの発表原稿を1人で書いて、メンバー一人ひとりに発表内容を分担していた。その発表の水準が非常に高かった。
テーマは〝オーダーミス、テーブル番号ミス防止、0への挑戦パート1〟である。はじめにと題して次のように述べている。
「私たちが働いている○○○は、パチンコ店とゲームセンターに囲まれた中に位置しています。場所柄、色々なお客様が来られますが、特に昼間は急がれる方が多く、人手不足からサービスの行き届かない点があるのは否定できません。しかし今は店の尽力により、人手不足もようやく解消され、〝素早く味よく笑顔よく〟をモットーとして調理場、洗い場と共に力を併せ、心のこもったサービスの向上を目指して一生懸命頑張っています」
丁寧に一字一字書かれていて誤字、脱字もない原稿である。私は内心「おや、これは本当にAさんが書いたのか」と疑ったほどである。
私の目に映っているAさんは、いつもたどたどしく自信のなさそうな話し方をしている。だから原稿を見て「おや」と思ったのだ。それに文章も簡潔で、しっかりしているし、格調を感じられる。
次いで、テーマ選定理由として3点を挙げている。①お客様に二重の(料理待ちミス)迷惑をかける②1つのミスが仕事のリズムを狂わせる③お客様の立場に立って、もう一度サービスの原点を見つめ直していく。
活動計画表もきっちりしている。現状把握→目標設定→要因解析→対策(検討と実施)→効果の確認→歯止め→反省と、小集団活動の手順をふんでいる。 (つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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