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ブログ・小山 雅敬
第189回:「同一労働同一賃金対策」何から始めればよいのか?
2020年8月18日
【質問】同一賃金同一労働に関する法律が施行されると聞きましたが、中小運送会社が行う対策として具体的に何から始めればよいのかわかりません。
本年4月1日から「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム有期雇用労働法)が施行され、中小企業は来年4月1日から適用になります。この法律により、有期雇用労働者やパートタイム労働者と通常の労働者(いわゆる正社員など)との間で不合理な待遇差や差別的な取り扱いが禁止されます。また、待遇差について社員に対する説明義務が課されることになります。
「同一労働同一賃金」については時々内容を誤解している経営者がみられます。この法律では正社員間の待遇差や非正規社員間の待遇差を問題にしているのではなく、正社員と非正規社員との待遇差のみが問題になります。
また、労働条件を無条件に同一にすることを求めているのではなく、法律の要件に照らして「業務内容」や「責任度合」「職務内容や配置の変更の範囲」などに相違がある場合は、待遇差の理由を社員に説明し、その相違内容に応じてバランスのとれた処遇にすることを求めています。ただし、職務内容や配置などに何も違いがないのであれば、同一の処遇(均等待遇)にしなければなりません。
中小運送会社が具体的に行うべき実務的な対策としては、①正社員、嘱託、パートなどの雇用区分ごとに現状の労働条件を一覧表で整理し、相違の有無を再確認する。例えば、中小運送会社の場合は、賃金、賞与、退職金の他、社員表彰制度、社員旅行、旅費日当、食事代、研修などの福利厚生全般について検討。適用の有無や基準などに違いがあれば、その理由を備考欄に記載しておく。②正社員、嘱託、パートなどの雇用区分ごとに「業務内容」「責任度合」「職務内容や配置の変更の範囲」「その他」の違いを検討し、整理する。違いがある場合は、文書で明示する。例えば、就業規則中の「社員の定義」の条文に、その内容を追記しておくとよい。(例、正社員には「職務内容や配置を限定しない」と追記。嘱託やパートには「職務内容または配置を限定して雇用」と追記する。ただし、実態が伴っている必要あり)③現状の賃金制度(基本給や諸手当、その他)について、各項目別に支給意義や妥当性を整理し、手当の改廃を含めて見直しの必要性を検討する。
中小企業の適用開始までの1年間に、これらの対策から始めるとよいでしょう。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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