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ブログ・小山 雅敬
第207回:今後の法改正に向けた準備とは
2021年5月18日
【質問】運送業の経営に影響を与える今後の法改正について、その内容と対策を教えてください。
2021年は緊急事態宣言の再発令からスタートし、現在はコロナ感染防止対策が最優先事項ですが、今後、続々と法改正が控えていることを忘れてはいけません。法改正に対する準備をおろそかにしていると経営に大きな影響を与える可能性があるからです。
今後の法改正を時系列で整理すると、まず2021年4月に「パートタイム有期雇用労働法」が中小企業で施行されます。所謂「同一労働同一賃金」の法規制です。併せて同時期に「高年齢者雇用安定法」改正により、70歳までの就業機会の確保が努力義務として課せられます。高齢者は非正規社員として再雇用する場合が多いため、2つの法律は相互に関連しており、対策を講じる必要があります。具体的には業務内容や責任の程度、配置の変更の範囲などの観点から、雇用形態ごとに位置づけを整理し、社内規定などに明記する、また労働条件に不合理な格差があれば是正しておく必要があります。
2022年4月にはパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が中小企業で施行されます。職場のパワハラ防止の方針を服務規律や懲戒規定に明記、社員研修の実施、相談窓口の設置などを準備しなければなりません。
また2022年10月には年金制度改正法により、従業員数100人超の会社でパートにも社会保険が適用になります。
2024年には従業員数50人超の会社に対象が拡大します。人件費負担が増加する会社は経営計画に組み入れて、対策を検討する必要があります。
2023年4月には労基法改正に伴い、60時間超の残業に対して残業割増率が2倍(25%→50%)に上昇する法規制が中小企業で始まります。特に残業時間が多い長距離輸送の会社は労働時間短縮に向けた対策を前倒しする必要があります。
2024年4月からは自動車運転業務従事者に対する時間外労働の上限規制が施行されます。残業を年間960時間以内に抑えられない会社は、懲役(6か月以下)や罰金(30万円以下)などの罰則が適用になります。労働時間短縮ができない会社は市場から撤退せざるを得ない状況になります。
また、2025年には賃金債権の消滅時効が3年から5年に変更になる可能性があり、未払い残業代請求訴訟が激増する恐れがあります。賃金体系の見直しは早めに行う必要があります。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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