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ブログ・小山 雅敬
第218回:運送業の2024年問題とは
2021年11月2日
【質問】運送業の2024年問題とは何でしょうか? その概要と影響などを教えてください。
働き方改革には中小運送業が乗り越えるべき5つのハードルがあります。
①年休5日取得義務化(2019年4月〜)
②時間外労働の上限規制一般則年720時間の適用(2020年4月〜)
③同一労働同一賃金(2021年4月〜)
④月60時間超の時間外割増率引き上げ25%→50%の適用(2023年4月〜)
⑤自動車運転業務の時間外労働上限規制年960時間の適用(2024年4月〜)の5つです。
そのうち①〜③はすでに施行されていますが、今後始まる④と⑤の法改正は、①〜③の比ではなく、運送業の経営に甚大な影響を及ぼすことが確実です。
2024年問題とは、直接的には前記⑤(及びその前年の④を含む法改正)とそれが運送業の経営や物流システム全体に与える甚大な影響のことを言います。
今までドライバーの長時間労働を前提に仕事を発注していた荷主や受注していた運送会社は、現状を改善しない限り確実に行き詰まります。
特に、長距離輸送の分野は影響が甚大です。従来は、自社の36協定の限度を超えない限り法違反にならず、改善基準告示の限度を超えない限り行政処分を受けませんでした。
2024年4月以降はドライバーの残業が年間960時間を超えた段階で罰則(30万円以下の罰金または6か月以下の懲役)が適用されます。
併せて、改善基準告示の拘束時間が短縮される予定です。これを無視した会社は送検され、または行政処分を受けて経営の継続が困難になります。
運送会社が経営を維持するためには運行体制を見直すしかありません。荷主も同様で、一部の荷主では物流の再構築が必要です。待機時間削減、デポの立地見直し、物流体制の再検討、運送委託先の変更などの動きが出るでしょう。
また、運送会社で労働時間の削減ができても、それに伴い従業員の賃金が減少すれば、退社を誘発し、人手不足の加速が予想されます。労働時間の削減と賃金の維持を同時に達成する必要があります。
さらに、2024年問題の対策を困難にしているのが法改正当時に想定外だったコロナ禍です。運賃・料金引き上げが2024年対策の必須条件ですが、運賃などの交渉が非常にやりづらい状況が続いています。
加えて、再び最低賃金の大幅上昇が人件費増に追い打ちをかける見込みです。2024年対策まで考える余裕のない会社が多く、2024年を乗り越えられるのか心配な状況です。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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