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ブログ・小山 雅敬
第240回:個人ドライバーからインボイス制度に関する抗議を受けた
2022年11月11日
【質問】当社は軽貨物運送の個人ドライバーと業務委託契約を結び、配送業務を行っています。2023年10月からスタートするインボイス制度について個人ドライバーに説明したところ、会社の方針に対して「下請法違反ではないか」との抗議を受けました。インボイス制度に伴う個人ドライバーへの対応について事例などがあれば教えてください。
インボイス制度とはインボイス(適格請求書)を用いて消費税の仕入税額控除を受ける仕組であり、2023年10月の制度開始以降、「消費税の課税事業者」として登録された「適格請求書発行事業者」のみが適格請求書を発行できることになります。
免税事業者(個人ドライバーなど)に業務を委託している運送会社は消費税の仕入税額控除を利用できず、その分だけ消費税負担が増加することになります。
免税事業者が2023年10月から「適格請求書発行事業者」になるためには2023年3月までに「消費税課税事業者選択届出書」と適格請求書発行事業者登録の申請書を税務署に提出してもらう必要性があり、軽貨物運送の個人ドライバーに業務を委託している運送会社は現在、法改正の内容を個人ドライバーに説明して課税事業者へ転換する手続きを進めてもらうようにお願いをしています。
一方で公取委や中小企業庁は「インボイス制度後の免税事業者との取り引きに係る下請法などの考え方」のなかで、
⑴一方的に課税事業者への転換を求めることや免税事業者との取り引きを打ち切ること
⑵免税事業者に対して消費税相当額の一部または全部を支払わないこと
などが下請法や独占禁止法などに違反する行為であると公表し、注意喚起しています。
インボイス制度の動向に対して、個人ドライバーの関心は極めて高く、会社の方針を注視しているため、会社から課税事業者への転換を依頼された途端に「一方的な通告を受けた」と捉えられ、ご質問のような抗議に結び付くことがあります。
そもそも会社が課税事業者に業務委託したいと考えることは当然であり、国が決めた制度を該当者に周知して手続きを促すこと自体は全く問題ないのですが、誤解を与えることによって個人ドライバーの反発や離反を招くことは避けなければなりません。
よって対応方法は次の通りに進めるべきだと考えます。
⑴制度の趣旨と手続き、期限などを説明し、2023年3月までの手続きを依頼する(一回の説明会で済ませるのではなく、各個人との話し合いを行う)
⑵制度開始時点で免税事業者との取り引き停止は行わず、経過措置(3年間、消費税8割控除可)を利用しつつ、話し合いを継続する
⑶優秀なドライバーとの雇用契約転換など、優良人材の引き留めを検討する。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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