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ブログ・小山 雅敬
第147回:運送会社のこんな給与体系が危ない!
2019年1月8日
【質問】恥ずかしながら当社で最近、退職直後の社員から多額(600万円)の未払い残業代を請求されるトラブルが発生しました。同じトラブルを繰り返さないために、早急に制度改定を行いたいと思います。運送会社の危ない給与体系の例と、給与体系の変更の仕方を教えてください。
実際に未払い残業代請求、その他の賃金トラブルに直面し、弊社が給与体系改定の相談を受けた運送会社の給与体系例を、その相談件数の多い順番に挙げてみると、次のとおりです。
①賃金規程や給与明細に「時間外手当」や「深夜手当」が明確に記載されておらず、「歩合給」または「その他手当」「特別手当」などを残業代の代わりとして支給していた例(社員に口頭説明、または規程上に「残業代を含む」と記載していた例が多い)②残業代の単価を基本給のみで計算していた例③給与の支給総額を完全歩合(売り上げまたは粗利、もしくは運行回数など)で計算し、給与明細上の内訳として基本給、時間外手当、深夜手当などに振り分けていた例④労働時間管理を行っておらず、「固定残業代」が否認された例︱︱などが多く見られます。
運送会社の給与体系は各社独自のもので千差万別であり、前記以外にも多数のトラブル体系が存在しますが、前記に挙げた例が最も危ない給与体系であり、早急な見直しが必要と言うことが出来ます。そのような給与体系はいずれ労使間のトラブルを引き起こしますので、改定を検討するのですが、給与体系の変更を検討する際には次の項目をポイントとして押さえておく必要があります。
①労働時間管理を、どのように行うか? (現在、時間管理を行わず、出庫時間などを運転職任せにしている運送会社もありますが、今後は時間管理を行わないという選択肢はありません。今後はデジタコやアルコール検知器などの利用を検討すべきです)②割り増し賃金の明確な区分と給与明細への明示(これがトラブル防止の最大のポイントになります)③歩合給(名称は業績給、能率給、貢献給など多種多様です)の適切な活用(歩合給には法的利点と社員の納得性、労働時間短縮に対する効果などのメリットがあります。ただし、割り増し賃金を区分して別支給することが導入のポイントになります)③最低賃金が年々上昇することに対する対策(最低賃金割れを発生させず、かつ人件費の適正化による財務の安定化を図ることが大切です)④給与体系の改定時における経過措置(給与体系改定で、給与が下がる社員が出る場合、現給与の水準を一定期間維持(補填)して激変を避ける仕組みが必要です)
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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