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ブログ・小山 雅敬
第160回:特定受給資格者狙いで退職後にパワハラの訴え
2019年7月9日
【質問】ある社員の勤務態度が悪いため、管理者が注意したところ、「それなら辞める」と言い放ち、出社しなくなりました。数日後に「雇用保険の特定受給資格者になりたいので、パワハラの事実を認めてほしい」と会社宛てにメールが来ました。このような社員に対して、どう対応すればよいでしょうか。
雇用保険の特定受給資格者とは倒産・解雇などの理由により再就職の準備をする時間的余裕がなく離職した者のことをいい、失業等給付(基本手当)で自己都合退職者より優遇されています。
特定受給資格者は失業等給付の受給資格を得るために必要な雇用保険加入期間が「6か月以上」に短縮(通常は12か月)されており、また失業等給付の給付制限(通常の自己都合退職は3か月)が免除されます。さらに給付日数が増し、受給額が増える場合があります。特定受給資格者に該当するのは、会社が倒産した場合、または事業所の廃止、移転により通勤が困難になった場合、解雇や賃金不払い、大幅減額、雇い止めの場合、その他いくつかの認定基準が決められています。その基準の中には、上司・同僚などからパワハラや嫌がらせを受けた場合、セクハラの事実を知りながら雇用管理上の措置を講じなかったことにより退職した場合も認定基準として含まれています。
そのため一部の自己都合退職者の中には、退職後に認定基準を知り、早めに失業等給付を受給し、なるべく多くもらいたいと考える人がおり、自らの行動が原因で勝手に辞めた場合であっても、退職後に上司のパワハラが退職原因であると主張する人がいます。この場合、離職票に記載された離職理由に基づいてハローワークが判断しますが、会社と退職者本人の言い分が異なる場合には、聴取や証拠などにより事実関係を調査し、最終判断を下すことになります。
つまり、明らかに本人が事実と異なる主張をしている場合でも、会社は調査を受け、その主張の間違いを説明することになります。よって、日頃から問題行動の多い社員は、その都度注意し、こまめに事実を記録しておく必要があります。なお、トラブルの予兆がある場合は、本人を注意指導する際に録音するなどの慎重な対応も考えられます。
なお認定基準の中には、離職前6か月間のうち、いずれか連続する3か月で45時間の残業、もしくはいずれか1か月に100時間以上の残業、またはいずれか連続する2か月以上を平均して1か月80時間を超える残業があり離職した場合が含まれています。残業時間について認定の申し出を受けることも多いので、残業過多には注意してください。事実に基づき正しく離職票に記載する必要があります。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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