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ブログ・小山 雅敬
第166回:「運行手当」金額の合理的な決め方
2019年10月1日
【質問】わが社には地場配送と中長距離輸送の仕事があります。この数年で運行ルートや高速利用状況、所要時間などが変化したため、運行手当の見直しを進めていますが、どのように運行手当の金額を設定すればよいか悩んでいます。運行手当の合理的な決め方を教えてください。
運行手当は一運行ごとに決められた手当を支給する賃金計算基準であり、運行方面別に区分して手当金額を設定します。売り上げ歩合に比べ収受運賃の格差による不公平感が少ないため、特に運賃格差が大きい長距離運行の賃金計算基準としてよく利用されます。
運送業界で一般的に見られる賃金計算基準ですが、最近、運行ルートや高速道路利用が変化したため、「運行手当表」の見直しを行っている会社が増えています。運行手当の金額設定は会社の財務や社員のやる気に大きく影響するため、合理的な金額を設定することが極めて重要です。
運行手当の金額を決めるときの大事な要素として、①適切な労務比率になること②運行ごとに不公平感が生じない納得性のある設定をすること︱︱が挙げられます。そのため、運行手当の金額は次の計算で行う必要があります。例えば、10㌧長距離運行の場合、「運賃収入対賃金比率(社会保険料除き)」の目安は約30%になります。よって一運行に対して運転職に支給できる運行手当は、「一運行当たり運賃収入×0・3︱当該運行にかかる所要日数×(1日当たりの基本給と運行手当以外の諸手当の合計)」が目安になります。
この金額が財務上から算出される運行手当の目安ですが、運転職の負担感は必ずしも運賃水準と一致しません。運賃は低いが待機時間が長く苦痛に感じる仕事、または運賃が高く荷役作業も少ない楽な仕事などが混在します。これらを運行手当に反映しないと、社員の不公平感が増幅し、退社に結びつくこともあります。
作業の負担感を運行手当に反映するときは、原則として運行手当に組み込むのではなく、当該業務ごとに加算額を決めて追加支給する方法をとります。「仕事の負荷に対する加算部分」を区分して明示し、納得感を得るためです。その際、あまり高い加算額を設定しないことがポイントです。運行方面ごとに目安額が決まったら、それを一覧にして比較検討します。次に、いわゆる三角運行(A地点→B→C→Aの運行)の場合に、運行手当をどう決めるかの問題があります。この場合は何パターンも運行ルートが発生するため、立ち寄り先を追加した場合の手当額を別に定める方法が一般的です。この場合もあまり高い金額を設定しないことがポイントです。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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