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ブログ・小山 雅敬
第172回:65歳定年制の勧め
2019年12月24日
【質問】我が社の定年は60歳です。現在、定年制の見直しを検討中です。運送会社が定年を65歳に変更した場合のメリットやデメリットについて教えてください。
運送会社で高齢者の比率が加速度的に高まっています。従来の労務管理の常識は、運転職が高齢になると、加齢に伴う身体上の変化が避けられないため、業務中の事故を未然に防ぐ観点から定年を早めに設定し、健康状態をチェックしながら1年契約で継続雇用するという考え方が主流でした。60歳定年が義務づけられる前には、「ドライバー定年制」を設けて、事務職より早い定年を設定していた運送会社もよく見られました。
ところが現在は、未曽有の人手不足であり、状況は一変しました。働けるうちは貴重な戦力として長く勤めてほしいと考えるようになってきました。
現在、定年年齢をさらに引き延ばす法改正の動きが進行していますが、今、運送業の現場で起こっている意識変化は法改正動向によるものではなく、経営上の必要性から起こっている変化です。私は運送会社の経営アドバイスを長年続けてきて、「これからは高齢者がやりがいをもって仕事に取り組める会社にすることこそが勝ち残りの必要条件」だと考えています。よって定年を65歳以上に変更することをお勧めしています。顧問先の中には定年を70歳に変更、あるいは定年制廃止にした運送会社もあります。
定年を65歳以上に変更する最大のメリットは、社員の安心感とやりがいの維持です。現役として長く会社に貢献してもらうことです。副次的には助成金の受給や、同一労働同一賃金の問題を解決することにもつながります。デメリットとしては、前述した加齢に伴う健康管理や安全への特段の配慮が挙げられます。一段レベルアップした健康管理が必要になります。
しかし、これは一層の安全管理体制を作ることにつながり、経営の質を高める効果があります。実務的には、一定の年齢(例えば60歳)を過ぎた段階で、限定正社員に移行してもらう制度も検討すべきでしょう。限定正社員とは勤務場所や勤務時間、勤務する職種などを限定し、限られた範囲で活躍してもらう制度です。評価制度や労働条件も実態に応じて労使間で決めていく必要があります。高齢者の中には限定した勤務を望む人も多く存在します。
高齢者が働きやすい職場環境に変えていくことが、若手や女性の採用にもつながります。これからの運送会社が目指す姿でしょう。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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