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ブログ・小山 雅敬
第173回:歩合給の変動を抑えて手取り額を安定化したい
2020年1月7日
【質問】現在、わが社は運転職の賃金を歩合給で支給しています。歩合給は、このまま維持したいのですが、人材募集のために、歩合給の繁閑による変動を抑えて月々の賃金を安定化したいと考えています。歩合給のメリットと賃金安定化のために運送会社が工夫している方法があれば教えてください。
歩合給の利点としては①割り増し賃金の計算にあたり、適用する割増率が低い(固定給の割増率が1・25に対し、歩合給は0・25が適用される)②労働時間ではなく成果に基づき計算されるため、生産性が高い社員を処遇できる③年齢や勤続とは無関係に若くても業績や成果次第で高い賃金を受け取ることが可能④上司の恣意的な評価が入らず、賃金に納得感が得られる︱︱などが挙げられます。
一方でデメリットとしては、①売り上げなどの業績数値が季節的要因で変動するため、賃金が不安定になりやすい②担当する荷主や業務によって割の良い仕事と不利な仕事に分かれ、不公平感が生じることがある(※これは歩合基準の見直しで解決できます)③一般的に歩合給に対するイメージが悪い︱︱などが挙げられます。
私は約30年間、全国の様々な運送会社を対象にコンサルティングを実施してきました。数多く運送会社の社内制度を構築してくると、運送会社の現場で働く運転職の志向がよく見えてきます。特に大企業ではなく、中小運送会社で働く運転職の多くは月例賃金(特に手取り額)に対して非常に関心が高く、金額が不確定な賞与や長年働いた後に貰える退職金には月例賃金ほどの関心を示しません。月例賃金の決定基準の内容で日々の行動が大きく変わるといっても過言ではありません。どのような賃金を求めているかというと、①計算しやすく、わかりやすい賃金②自分の努力が直接賃金に反映されて、会社の恣意的な評価等で下げられない賃金③頑張れば賃金が上がる仕組み(何をすれば上がるのかが明白な仕組み)︱︱などです。
さて、ご質問の内容は歩合給体系を維持したまま、歩合給の不安定要素を抑えて、月々の賃金を、より安定化したいということです。歩合給の利点を維持したまま、安定化を図る、その対策として運送会社が採り入れているのは、歩合率に季節係数を掛けてレートを決定する変動レート方式の導入です。月々の手取り賃金を安定化するためには繁忙期のレートを下げ、閑散期のレートを上げることで安定化が図れます。季節係数は会社業績(売り上げや取り扱い件数など)の推移を計数化して決めます。変動レート方式を検討する場合は会社が一方的に決めるのではなく、労使で話し合い、合意することが必要です。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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私が在籍している会社は完全な日給制なので、現在は労災で休んでいます。よって昨年の12月は全く働いていないので1月25日支給の給与はありません。賃金は決して悪くないのですが、年齢的な事も考えて退職しようと思っています。年齢は3月末で65歳になります。ちなみに、他の仕事も賃金的にはさほどでもないのですが、一応あります。
個人事業者にしてはいかがかと。