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ブログ・小山 雅敬
第124回:退職時の年休消化中に他社で勤務を始めた社員への対応
2018年2月13日
【質問】当社の社員で退職時に残った年休を全て取得したいとの申し出があり、応諾しましたが、その後、年休消化中に他社に雇用され、勤務を始めたことが判明しました。このような社員への対応と、今後の防止策を教えてください。
一般的に、会社の就業規則には「兼業禁止規定」が記載されています。例えば「会社の許可なく業を営み、または在籍のまま他に雇われてはならない」など、副業を禁止する条文です。通常は兼業禁止規定に対する違反を懲戒事由とし、懲戒対象にしています。特に運送業の場合、ドライバーの適正な休息期間確保は事故防止に直結する重要問題であり、安全管理の観点からも、安易に他社での副業を認めていない会社が多く見られます。この兼業禁止規定は年休取得中でも、当然適用になり、会社の許可を受けない限り、勝手に他の会社で勤務することは出来ません。
問題は、退職前の年休消化中でも同様に適用されるのか、という点ですが、基本的に退職前の取得であっても同様であり、社員である限り就業規則が適用になります。会社にとっては急な退職申し出により戸惑っている時に、仕事の引き継ぎもしないまま、自らの権利だけを主張して翌日から出社しなくなり、休暇中に同業他社で働き始めるのは到底納得できない事態です。会社の事情を全く考慮しない社員の身勝手さに経営者が憤りを感じるのも当然です。年休の取得は労基法上の権利ですから、認めざるを得ませんが、勝手な兼業については就業規則違反である旨を明確に指摘しておく必要があるでしょう。
問題は、今回のように年休消化中の兼業に対してどう処理するかですが、結論的に言うと、即、懲戒に処すことは避けて、本人を会社に呼び、説明を求めたほうがよいでしょう。仮に就業規則違反による懲戒解雇や出勤停止の処分を決定したとしても、すでに業務を終了し、自社で働く意思がない社員に対して、実質的な意味合いを持たないと考えられます。違反状態を解消するか、退社日の繰り上げをするかを本人と話し合い、円満な解決方法を探るほうが現実的です。ここでは一旦冷静になり、今後の具体的な防止策に目を向けるべきでしょう。
このような事態を防止するためには、退職前の年休消化予定者に対し、「兼業禁止に関する確認書」を取り交わすことが考えられます。また、最終の賃金精算については事務所に来所してもらい、現金で精算するなどの対策を打つ会社も見られます。
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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